大沢たかお「曖昧なセリフで濁すこともなく、真正面から向き合っている」ドラマ『沈黙の艦隊』に込められたもの
――人って、誰かをあわせ鏡にしてこそ、その本質が浮かび上がるんだなあと二人の対比を観ていると感じます。 玉木くんも「たぶん大沢さんはこういうふうに海江田として動くだろうな」ということを想定して、現場に臨んでいてくれたらしいんですよ。彼は経験が豊富だし、才能もあるから、計算しながら登場人物の温度を加えていくことができる。役としてでなく、実人生を生きている彼の人間としてどうあるべきかという葛藤もたぶん滲み出ているんじゃないのかな。玉木くんが演じたからこそ、深町というキャラクターはあれほど魅力的になったのだと思います。
後半にいくにつれて迫力が増すし、ハラハラする
――ほかの共演者の演技で印象に残っているものはありますか? たくさんありますが、総理大臣役の笹野(高史)さんと彼を支える官房長官を演じたえぐっちゃん(江口洋介)の場面は、台本をはるかに超えていいものに仕上がっていると思いました。それと、“影の総理大臣”といわれる内閣官房参与を演じた橋爪(功)さんは、台本からは想像できないエネルギーを放っていましたね。台本はもう少しわかりやすくイライラしている感じで描かれていたんだけれど、いろんな葛藤といろんな種類の不快感をまぜあわせ、さらにそれを抑えた、橋爪さんにしか表現できない表現がそこにありました。改めてドラマを観て、後半にいくにつれて迫力が増すし、ハラハラする。めちゃくちゃおもしろいじゃん!って思いました(笑)。 ――海江田はずっと潜水艦で海の底に潜っていますし、演じているのと観るのとではきっと印象がまた違いますよね。 そうそう、だからラストで地上にあがっていく場面を演じたときは嬉しかった。潜水艦のなかでも仁王立ちしている場面が多いから、やっと歩ける!って(笑)。
大沢たかお 3月11日生まれ、東京都出身。1994年にドラマ『君といた夏』で俳優デビュー。その後、数々のドラマや映画、舞台に出演。近年の主な出演作に、映画『AI崩壊』、「キングダム」シリーズ、ドラマ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』など。2024年7月12日には、『キングダム 大将軍の帰還』が公開予定。 【Information】 Amazon Originalドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』 Prime Videoにて世界独占配信 <あらすじ> 日本の近海で、海上自衛隊の潜水艦が米原潜に衝突し沈没した。艦長の海江田四郎(大沢たかお)を含む全76名が死亡との報道に衝撃が走る。だが実は、乗員は無事生きていた。事故は、日米政府が極秘に建造した高性能原潜「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だったのだ。ところが、海江田はシーバットに核ミサイルを積載し、突如反乱逃亡。海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言する。 やまとを核テロリストと認定し、太平洋艦隊を集結させて撃沈を図るアメリカ。やまとを追いかける、海自ディーゼル艦「たつなみ」。その艦長である深町(玉木宏)は、過去の海難事故により海江田に並々ならぬ想いを抱いていた――。