ミズノがノンアルビール!?運動後の〝後ろめたさ〟なく飲める一杯が人気 PUHAAH、販売開始7カ月で売り上げは目標の4倍
スポーツで汗をかいた後、冷えたビールを一気に飲み干したい。でも、後ろめたさがぬぐえない。こんな悩みを感じる人は多いのではないだろうか。 スポーツ用品大手のミズノは長野県のクラフトビールメーカーと協力して、運動後に飲むことを想定したノンアルコールビール「PUHAAH(プハー)」を開発した。「爽快な一杯」を提供し、スポーツを続けるモチベーションを高めてもらうことを狙う。ミズノとして初めての飲料開発がどのようにして進んだのか取材した。(共同通信=木村遼太郎) ▽50%が「スポーツ後にビールを飲みたい」 開発を担当したのは、グローバル研究開発部の近藤由佳さん(47)。営業部門にいた2020年、これまでミズノが進めていなかった分野に挑戦する社内プロジェクトに参加し、飲料をテーマに構想を始めた。さまざまな飲料を検討する中、20歳以上の男女約650人を対象に、インターネット上でビールについての意識調査を行った。 その結果、約50%が「スポーツ後にビールを飲みたい」と答えた一方で、「我慢している」という回答も約30%あった。飲まない理由については「体にいいことをしたのに、後ろめたい」といった意見が上がった。アルコールには利尿作用がある。汗を大量にかいたあとにアルコールを摂取すると脱水症状を起こす可能性があり、身体に悪影響を及ぼす。
ノンアルコールビールなら、健康にいい効果をもたらすという研究報告を見つけた。ミュンヘン工科大学の研究者らが2012年に米国のスポーツ医学誌に寄せた論文によると、ノンアルコールビールをマラソン後に飲むと、含まれるポリフェノールの抗炎症作用で、飲まない場合に比べ風邪などにかかりにくくなるという。こうした研究や意識調査の分析などを踏まえ、近藤さんたちは「ノンアル」に着目した。 ▽飲料開発はゼロからのスタート 近藤さんは「ビールをご褒美にスポーツを続けてもらえるよう、プハーと言える味わいにこだわった」と話す。複数のクラフトビールメーカーに相談する中、コンセプトや味の開発に興味を持った南信州ビール(長野県駒ケ根市)との協力を決め、2021年1月から共同開発を始めた。ミズノ側のチームは近藤さんを含め4人。南信州ビールは竹平考輝常務が中心になって開発に携わった。 南信州ビール側がサンプルをつくり、ミズノ社員が実際にスポーツをした後に試飲し、改良を加えながら開発を進めた。ビールの原材料となるホップは香りを重視して選んだ。爽快感のある「カスケード」や、かんきつ系の香りがする「モザイク」を使用し、軽やかな味わいに仕上げた。竹平さんは「心地よいのどごしと爽やかな酸味が特徴。ホップ由来の香りを豊かに楽しめる」と説明する。