冷静沈着にRISE頂点を極めた那須川天心はなぜ試合後にK-1武尊戦実現をアピールしたのか?
しかし、21歳の神童のゴールはここではない。 天心はリング上で衝撃発言を行った。 「武尊選手、そしてK-1の陣営に言いたいことがあります。みなさんの声に応えるのが選手だと思いませんか。ボクは逃げも隠れもしない。SNSに書き込んだりするなら、さっさと正式に話を下さい。待っています」 K-1サイドから「天心が武尊のことをあれこれ挑発するのは営業妨害だ」との訴訟を起こされ、これまで公式発言を控えてきたが、覚悟を決めたかのように7200人ものファンに思いを届けた。 バックステージで改めて、その真意を問われ、「日本でなんで組まれないのか不思議。あれだけ騒がれて、お互いにやる気があるのにやれないのはおかしい。今はそんな時代ではない。そういうことをしているから、日本の格闘技が枠に収まっちゃう。ドリームマッチは1回じゃなくていい。もっと大きくできると思って言ったんですが、どうなんですか?」と、メディアに問いかけるようにして説明した。 さらに「具体的なものは何もない。本当にオファーがまったくないんで。僕はやる気持ちがある。(実現は)向こう次第です」と付け加えた。 RISEの伊藤隆代表も、天心の発言を全面サポートする考えであることを明らかにした。 「ファンが見たいのは誰が一番強いんだということ。そのために組むのは問題ない。やるならニュートラルな舞台で最高の環境でやらせたい。東京ドームとかでね。(武尊以外の他の)K-1の選手がきて全面戦争でもかまわない。実現の可能性? 向こう次第。いつでもやります」 伊藤代表は、さらにニュートラルな舞台は早ければ大晦日のRIZINだとし「マッチメークには賞味期限がある。あと半年だと思う。最高の状態で両者のために組んでおきたい。年齢も年齢。1年もたつと差がでる。やる、やるで2、3年かかっている」と具体的なタイムリミットまで定めた。武尊が28歳で天心は21歳。格闘家のピークを考えると、今が両者にとって最高のタイミングではないか、という意見だ。 サイは投げられた。あとはK-1の出方待ち。 武尊戦へのイメージや勝算を聞こうと、天心に「最近の武尊の試合を見ているか?」と話をふってみたが、「最近は試合も見たりしていない、今回の試合に集中してやってきたので。わかんないですね」と、答えなかった。 おそらく、それは本心でもあり、RISEの看板を背負って頂点に立った天心のプライドなのだろう。 今回の優勝賞金は1000万円だった。その使い道を聞かれた天心は、自らが生まれ育った千葉の台風15号による災害への復興支援と、昨年11月から「天心ファミリープロジェクト」として始めている全国の養護施設の子供たちへの寄付に充てたいと申し出た。 「自分の試合で元気が出る子供たちがたくさんいる。誰かの人生の分岐点になれるって凄い。僕の試合を見て、元気を出し頑張ろうと思っている人が増えてくれれば嬉しい」 自らの夢を子供たちの勇気へ変えたい。 実現すれば、K-1の武尊との“真の最強決定戦”は、その夢への大きな一歩になるはずだが、果たして……。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)