なぜ経営者は「哲学」を学ぶべきなのか、イノベーションが生まれない日本企業に欠けている思考法
■ 仕事の思考は子どもの遊びと同じ 仕事で何かを考える際、なかなかアイデアが出ずに困った経験がある人も多いのではないだろうか。子どもの頃はすぐに「遊び」のアイデアが浮かんでいたのに、大人になるとなぜかそうはいかない。 この現象について小川氏は、アメリカの思想家エリク・ホーンブルガー・エリクソンが唱えた遊びを三分類する思考をベースに、次のように考える。 もともとは子どもの遊びを念頭に置いたものですが、大人にも当てはまるといいます。大人もまた、仕事で何か考える際に、ある意味で遊びという活動をしているのです。 子どもの頃のように、みんなでわいわいガヤガヤと楽しい雰囲気づくりをすることも大切。小川氏いわく、アイデア出し自体をゲームにして競争することで興奮につながり、面白いアイデアを出すことにプラスの影響がもたらされるという。 いずれにしても根を詰めて会議室に籠るのではなく、何より楽しんでやるということが大切なのではないか。 ■ 哲学的観点での真のリーダーシップとは 一方、リーダーともなると楽しいだけでは済まないのが現実。しかも、コンプライアンス意識が高まっている今の時代では厳しい指導もしづらく、リーダーシップを発揮しにくくなっている。 しかし、本当にそれでいいのか? 小川氏は、イタリアの思想家マキャヴェッリの論じた「君主論」を元に警鐘を鳴らす。 憎まれないように毅然とした態度を取る必要があります。その際、やはり狐の狡猾さが求められるのだと思います。相手から恨みを持たれないような内容や言い方に配慮し、そのうえで威厳を示すという事です。 「君主論」では、狡猾で罠にはまらない狐と強くて負け知らずの獅子をリーダーの模範としてたとえ、リーダーにはこの両方の能力が必要だという。
■ 「心」と「体」をそれぞれケアしよう 小川氏は自身の「心」と「体」の違いにも言及している。 あなたは休日に「心」と「体」のどちらも休ませることを意識しているだろうか? フランスの哲学者デカルトは「心身二元論」あるいは「物心二元論」と呼ばれる理論を唱え、心と体は別のものであると主張。心と体が一体のものだという思考に一石が投じられることになった。 小川氏はそんなデカルトの考えを紹介した上で、心と体を別物と意識することで日常がどう変わるかという点について、 両者が違うものであることを意識すると、おそらく心と体の両方をいたわるようになるのではないでしょうか。そうでないと、心を休めているつもりが、実は体は酷使し続けていて病気になるなどということになりかねません。またその逆もあるでしょう。 と述べ、心と体を“同時にケアすることの大切さ”に気づくはずだと語る。 海外では経営者が大学で哲学を学んだり、哲学者を経営に参画させたりするケースがある。哲学思考がイノベーションの礎となっているとの考えからだ。身の回りの当たり前を疑ってみることが、イノベーションにつながるかもしれない。
東野 望