社会問題のR&Dも担うNPO新時代の存在意義
2024年10月24日発売の「Forbes JAPAN」12月号では、第二特集で「到来! NPO新時代」特集を掲載している。「ステークホルダー資本主義」をはじめ、世界、そして経済社会が大きな変化の渦中にある。『Forbes JAPAN』では、コロナ禍以降、「インクルーシブ・キャピタリズム(包摂的な資本主義)」を提唱。すべての人を包摂しながら発展する資本主義の新しいあり方を意味する言葉だ。そのけん引役となるのは、大企業やスタートアップだけではなく、NPOをはじめとした非営利セクターが重要な役割を担うだろう。 ソーシャルセクターのネットワーク組織である新公益連盟は2024年10月、3人の共同代表理事の新体制を発表。「NPO新時代への移行期」でもある現在、彼ら彼女らが考える「NPOの未来」とは──。 経営学の巨匠、ヘンリー・ミンツバーグは2010年代に、「新たな経済社会」への道筋として「3つのセクターのバランス」を提唱。政府セクター、民間セクター、そして多元セクターのバランスが重要だという。一方、社会問題は複雑化、深刻化し、そして問題の定義や解決策の発見が難しい「厄介な問題(Wicked Problem)」化している。そんななか、多元セクターの代表的存在であるNPOに今、注目が集まっている。2024年10月、新公益連盟の新・共同代表理事に就任したクロスフィールズ代表理事の小沼大地、Learning for All代表理事の李炯植、WELgee代表理事の渡部カンコロンゴ清花の3人が「NPOの未来」と称して、3つの方向性を提示する。 小沼大地(以下、小沼):新公益連盟は2016年に設立し、社会課題の解決を目指す170以上の団体が所属するソーシャルセクターのネットワーク組織です。これまで代表理事を務めてきたのは、フローレンス・駒崎弘樹さん、ETIC.・宮城治男さん、トイボックス・白井智子さんといった、いわゆる「社会起業家」ブームと呼ばれる時代のNPOをけん引してきた先輩方です。私自身は、留職やフィールドスタディなどを通してビジネスパーソンと国内外のNPOをつなぎ、課題解決とリーダー育成の両方を目指しているクロスフィールズの代表理事を務めています。新公益連盟では設立時から理事を務め、今回共同代表理事になりました。 現在は、ステークホルダー資本主義の議論やESG投資の活発化、SDGsが浸透するなかで、大企業やスタートアップも社会課題解決を志向し、パーパスとして掲げる時代です。だからこそ、NPOの未来を考えるうえで、「NPOだからできることは何か」「優位性とは何か」など存在意義についてあらためて整理する必要があります。NPOは時代や社会の変化とともに姿を変えてきた存在であり、変えるべきだからこそ、今はいいタイミング。また、ひとりが代表を担うより、NPOの多元性を体現するためにも共同代表制がよいと話し合いました。