「避難勧告」難しい自治体の判断 過去には避難中に犠牲の事例
多くの死者・行方不明者が出てしまった伊豆大島(東京都大島町)の台風26号による 土石流災害では、「避難勧告」や「避難指示」をいつ、どのように発令すべきか、その難しさがクローズアップされました。避難勧告を出さなかった大島町に批判が出る一方、2009年夏の台風9号による豪雨では、勧告に従って避難中だった住民が水害に巻き込まれてしまったという例もあり、発令する立場の地方自治体にとって、大きな課題になっており、内閣府は「避難ガイドライン」の見直し作業に入りました。
発令ためらう自治体も
内閣府では2005年に、自治体向けとして「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を作成し、水害や土砂災害、津波などの災害を対象として、市町村が避難勧告や避難指示を出すタイミングや対象範囲の選び方などを示していました。しかし、このガイドラインには今年8月から気象庁が運用を始めた「特別警報」や2008年にスタートした「土砂災害警戒情報」について、避難勧告などにどのように反映するかは盛り込まれていません。 また判断基準については「できるだけ具体化を図りつつも、自然現象を対象とするため、想定以上又は想定外の事態も発生しうるので、総合的な判断を行うものとすること」としており、最終的な判断は各自治体の首長に委ねられています。このため台風などが接近して「避難勧告」などを発令しても大した被害がなかった場合、住民の危機感が低下し、次の災害時に勧告に対する住民の対応が鈍ることを恐れて、発令をためらう自治体も少なくないようです。
首長に委ねられる最終判断
大島町の場合、夜間に避難勧告を発令した場合、二次災害につながる恐れがあるとして勧告を見送りました。内閣府のガイドラインでは避難勧告を出す時間帯などについても触れられておらず、こうした課題を踏まえ、内閣府ではより具体的な指針をまとめたい考えです。一方、気象庁では、特別警報の判断ポイントの面積が狭く、台風などで大雨が降っても特別警報の判断基準に達しない大島などの離島については、特別警報級の警戒が必要と判断した場合、気象庁側が市町村長に直接連絡するといった措置をとる方針を示しています。