ヨーロッパの港湾に「中国製EV」が大量滞留の背景 EV販売が失速、中国メーカーの輸出拡大に暗雲
「中国からヨーロッパに輸出されたEV(電気自動車)が、荷揚げ港のヤードに大量に滞留しているのを目の当たりにした」――。 【写真】欧州委員会のフォンデアライエン委員長。欧州委員会は中国製EVに対して最高38.1%の追加関税を課すと発表した 中国のEVメーカー、睿藍汽車(リバン)の海外事業部の責任者を務める鄧暁丹氏は6月7日、重慶市で開催された自動車業界のフォーラムで、5月にヨーロッパを視察した際の経験を紹介した。 睿藍汽車は民営自動車大手の吉利汽車(ジーリー)の傘下企業で、電池交換式EVの開発・生産を手がける。「欧米市場のリスクは大きい。自動車の輸出にあたっては、細心の注意と長期的な計画が必要だ」。鄧氏はそう述べ、中国メーカーのやみくもな輸出拡大に警鐘を鳴らした。
■ドイツの補助金終了が痛手に ヨーロッパの港に滞留する中国車については、実は現地メディアが先に報道している。自動車業界紙のオートモーティブ・ニュースの欧州版は4月15日、複数の自動車メーカーがヨーロッパの港で広大なヤードを借り上げて輸入車の臨時保管場所にしており、その大部分が中国車だと報じた。 この記事によれば、ドイツ政府がEVの購入者に支給していた補助金を2023年12月に打ち切り、ヨーロッパ最大のEV市場であるドイツの需要が冷え込んだため、行き場を失った輸入車が港に滞留しているという。
そんな中、ヨーロッパでは中国車への逆風がさらに強まっている。EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会は、中国製EVに対する反補助金調査を進めており、高率の追加関税を課すとみられているからだ。 (訳注:欧州委員会は6月12日、中国製EVに対して7月から最高38.1%の追加関税を課す暫定措置を発表した) さらに追い打ちをかけているのが、ヨーロッパでのEV販売が(ドイツ以外でも)全体的に減速していることだ。市場調査会社SNEリサーチのデータによれば、2024年1月から4月までの期間にヨーロッパ市場で販売されたEVとPHV(プラグインハイブリッド車)は合計88万1000台にとどまり、前年同期比の増加率は8.6%と1桁台に落ち込んだ。