〈アサド政権の崩壊で起きるシリアと中東の苦境〉それでも“新シリア”を後押しすべき理由
Economist誌12月14日号が「新シリアはどう成功または失敗するのか。多くのことが悪くなるだろう。しかし今は暴君の没落を祝おう」との社説を掲載している。その要旨、次の通り。 反政府軍が12月8日ダマスカスに前進し、アサド政権の軍は空中分解した。 アサドがモスクワに逃亡した今、問題は、解放がどこにつながるかである。 シリアの新しい黒幕はとても「平和の人」ではない。最近の攻勢での主たる勢力、HTS(Hayat Tahrir Al-Sham)は、2016年までヌスラ戦線と言われていたアルカイダのシリア支部であった。その創設者アフメド・アル・シャラアはイラクでアブ・モハメド・アル・ジャウラニの名でISのメンバーとして米国と戦った。HTSとシャラアは、これらは過去のことであるとしている。 幾つかの外国は既に自分の利益のためにシリアで戦っている。北ではトルコの代理勢力が自治を求めるクルドと衝突している。シリア中部では、米国はISが聖戦を再開することを怖れ、そのキャンプを爆撃している。イスラエルは軍事装備と化学兵器を破壊し、ゴラン高原に侵攻、より多くのシリアの領土を占領している。 かくも多くの抗争を見て、多くの人々がシリアは再び内戦に陥ると考えるのは驚きではない。 シリアが安定する不可欠の条件は、シリアで寛容で包摂的な政府ができることである。戦争からの教訓はどのグループも単独では抑圧に頼らずに支配することはできないということである。多数派のスンニ派さえ、原理主義者に支配されることを望んでいない。 分断された国で新しい政治的解決を作り上げる困難な仕事はシャラアに行くだろう。彼の暫定国民政府はHTSに忠誠な人のみで構成されている。しかし、もしシャラアがシリアを大きなイドリブ(注:彼らはイドリブを支配してきた)として永久に支配しようとするなら、彼は失敗するだろう。シリアは戦闘する軍閥により分断されたままになるだろう。