なぜ阪神は最大7点差を逆転されたのか 岡田監督「修正でけへんのやなあ」 楽勝ムードが一転、DeNAの一発攻勢にひれ伏した悪夢の展開
「DeNA11-9阪神」(11日、横浜スタジアム) 左うちわの展開が数時間後、まさかの結末に激変した。3回までに近本の自身初となる満塁弾などで9得点を奪っていた阪神が、最大7点差をひっくり返されて負けた。9得点して勝てなかったのは、2018年6月29日のヤクルト戦に9-10で敗れて以来6年ぶり。7点リードからの逆転負けは2022年の開幕戦、3月25日のヤクルト戦以来の悪夢となった。なぜ、阪神は7点差を逆転されたのだろうか。 【写真】筒香に勝ち越しソロ被弾の阪神 ベンチの岡田監督ら呆然 試合開始前から横浜スタジアムには強風が吹き付けていた。読めない落下地点に守備陣が苦しみ、打ち取った打球が安打、適時打になる場面があったが、条件は両軍一緒。そんな中、阪神は1点リードの三回に佐藤輝と井上の連続適時打で追加点を奪った後、近本が右翼席にグランドスラム。一挙6点を奪ってリードを7点に広げた。まだイニングが浅かったとはいえ、誰もが阪神勝利を疑わなかった。 だが、である。先発の伊藤将は立ち上がりからボールが少し高く浮いていた。ボールも本来のキレを欠いているように見えた。3点を先制した直後の二回に2失点する悪い流れ。それでも2失点目は木浪の失策が絡み、四回の1失点も佐藤輝の一塁悪送球が端緒になっていた。まだ6点のリードがあった。 だが、勝利投手の権利がかかった五回2死一、二塁から佐野に中前適時打を許した。球数は66ながら、伊藤将の指先を離れた分身からは徐々に勢いが失われていた。それでも4-3の接戦を制した前日10日に先発・青柳の後に石井、島本、岩崎、ゲラの4投手を送り込んでいた。熱発で前日はベンチ入りメンバーから外れていた桐敷は大阪に帰しており、カード最終戦となる12日に救援陣が3連投になることを避けるためには、伊藤将には勝ち星をつかんでもらいたいという思いと同時に、少しでも長いイニングを投げてほしいという考えがあった。 伊藤将は4月17日の巨人戦で2勝目を挙げた後、同24日のDeNA戦で7回3失点(2自責)と粘りながらも勝てず、5月1日の広島戦でも5回1失点(0自責)で白星を手にできていなかった。勝利は何よりの精神安定剤になる。岡田監督は伊藤将がこの日、抜群のデキではないことを理解しつつも、何とか勝利投手にさせたいと考えていたに違いない。 しかし、そんな親心は無残にも打ち砕かれる。続く山本に四球。満塁となって京田に走者一掃の適時二塁打を浴びて風雲急を告げる2点差。我慢も限界だった。 2番手・富田がイニングをまたいで1回1/3を無失点。3番手・漆原も七回1死一、三塁のピンチで京田を二ゴロ併殺。好守にも助けられて2点リードを守り抜き、何とか無失点で切り抜けた。相手に傾きかけた流れは、ここで食い止めたはずだった…。 だが、直後の八回1死一、二塁で佐藤輝が二ゴロ併殺打に倒れ、またも風向きが変わる。その裏、連投の岩崎が1死から代打・桑原に珍しくストレートの四球を与えると、続く蝦名に直球を捉えられ、中越えに同点2ラン。関根の遊ゴロを挟んで筒香には勝ち越しソロ。代わった4番手・岡留も牧に2者連続本塁打となるソロを浴びた。筒香、牧は、ともに確信歩きの本塁打。まさかの3被弾4失点だった。 岡田監督は「初回からボールが高いってお前、言うてんのに。初回の5球見てみい、全部高めやんか。高い、高い、高い言うてんのに、修正できへんのやなあ」と伊藤将の乱調を敗因に挙げ、嘆き節を漏らした。続けて「ランナーためんことよ、結局な。初球ポンポンそらな、簡単に(ストライクを)取りにいったのをな、ランナーためるというかな」と、五回2死一、二塁で佐野に許した中前適時打、同2死満塁で京田に浴びた3点二塁打が、いずれも安打、四球後の初球を痛打されたシーンに触れ、左腕へ苦言を呈した。八回に2被弾して今季初黒星を喫した岩崎についても「まあでもお前、(リードは)2点あったからな」とかばうことはしなかった。 楽勝ムードが一転、今後に尾を引きかねないような敗戦となり、首位の座から滑り落ちた。このところ、自慢の投手陣が得点直後に失点するケースが目立ち始めた。貯金がある間に立て直したい。横浜スタジアムの左翼の人工芝には、阪神ファンの憤りを表すかのように、投げ込まれたメガホンが転がっていた。(デイリースポーツ・鈴木健一)