監督の目指すもの/2 タイマー使い練習効率アップ 限られた時間で集中 /香川
「ラスト1分!」。高松商の選手が電子タイマーに表示された時間を見て大声を張り上げる。タイマーが鳴ると選手たちはテキパキとボールを集めたり道具を片付けたりして、次のメニューへ移る。強豪私立ほど十分な時間が確保できない公立の高松商は、班ごとにローテーションで異なる練習に取り組む。 今回を含めて甲子園に春夏46回の出場を誇る高松商だが、専用グラウンドはなく、サッカー部との兼用だ。平日にグラウンドを全面使えるのは月曜日と木曜日しかない。午後4時ごろに始まる全体練習は4時間ほど。選手たちは限られた時間とスペースを無駄にしまいと、室内練習場やウエートルーム、グラウンド横の多目的広場などに分かれてトレーニングをする。 サッカー部がグラウンドを使う日は、打撃ゲージを本塁からバックネットに向かって設置し、一度に4人が打つ。打撃マシンも使えないが、近い距離から遅いボールを打って芯で捉える練習をする。谷正純選手(2年)は「自分は緩い球を引きつけて打つのが苦手。速い球を打つだけでは課題を克服できないので、グラウンドが狭いことを逆に利用して技術を磨きたい」。 打撃練習の方法は何種類もあり、スイングの力を付ける▽正しい打撃フォームを身につける▽速い球に慣れる--など目的が異なる。長尾健司監督は「それぞれの練習が異なることで、何を意識して取り組めばいいか頭の中を切り替えることができる」と語る。 「ボールが足りなくなりそうだから先に集めてから打ち始めよう」。選手たちは与えられた時間内でより多くの量をこなせるよう、常に練習の進め方について考えて意見を出し合う。一度タイマーが動き出せば、練習の仕方について長尾監督はほとんど指示を出さない。 効率よく練習するための方法を選手自身が見つけ出すことで、状況を判断する力も同時に養おうとするのが狙いなのだ。=つづく