五木ひろし「謙虚で家族愛にあふれた人、美空ひばりさん、52年の人生は短いけれど、没後35年経った今も歌は生き続けて」
◆家族愛の強い人だった ひばりさんの家族愛はすごかったです。おかあさんの喜美枝さんが自分のために生きているということで、弟さんたちが寂しい思いをしてしまったのではないかという気持ちからか、自分の家族のためにできることはなんでもやってあげようという気持ちが強かった。それはいい時もあるけれど、弟さんたちが反発することもある。僕は哲也さんとも話したことがあるけれど、結果として家族運が薄くなってしまったのは気の毒でしたね。 それだけに、和也くんの存在は大きかったです。本当に溺愛していた。ただ、和也くんは和也くんで結構言いたいことを言ってたみたいですね。 そんなひばりさんが福岡の病院に入院したときいて、僕、お見舞いに行ったんです。5,6分会えればいいかなというつもりだったのですが、誰もいなくて、1時間ぐらい話ができた。裕次郎さんが亡くなったあとで、そんな話になってしまったときにひばりさんは、枕元のティッシュをとって思わず涙を拭いていました。それで、自分が具合が悪いのに、まだ若くて仕事三昧の僕に「ひろしも身体に気をつけてよ」なんて心配してくれて、帰り際にハグして別れました。 その後、僕は、自分が結婚して幸せの絶頂のときに、ひばりさんは病と闘いながら不安でいっぱいのつらい時期を過ごしていらしたんだと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになるんです。
◆気を引き締めて歌い継いで行きたい 小さいころからひばりさんに憧れていて、同じ世界にいられるようになってからも僕は勝手にひばりさんからたくさんのことを学ばせてもらいました。 だから、というわけではないけれど、ひばりさんの「何回忌」のメモリアルコンサートには必ず伺っていました。名古屋で劇場公演があったときにも、昼間公演をやって、一度、東京に戻って「ひばりの佐渡情話」を歌ってまた名古屋に戻ったりね。お墓参りも入ってますしね。6月24日になるといつも心の中で手を合わせます。 52歳はあまりにも早い。でもね、考えてみると世界的にも、才能あふれるスターたちは早く亡くなっているんですよね。エルヴィス・プレスリー、マイケル・ジャクソン、マリリン・モンロー、ホイットニー・ヒューストン…。一方で、トニー・ベネットは96歳まで活躍したし、クリント・イーストウッドは93歳でもまだ現役。本当に人生ってわからないですよね。 肝心なのは、何を遺したか、ということではないでしょうか。没後35年たってもいまだに美空ひばりさんの歌は生きているし、この先も永遠に歌い継がれるでしょう。ただ、一般の人ならいいけれど、プロに歌い継いでもらうとしたら下手な人には歌ってほしくないなあ。と、元ご主人の小林旭さんがおっしゃっていました。 私もこれからはさらに気を引き締めてしっかりと歌い継いで行きたいと思っています。 (構成=吉田明美)
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