眞栄田郷敦&高橋文哉&板垣李光人、『ブルーピリオド』撮影を通して魅かれた互いの才能
◆「コンプレックスも強みになる」(板垣)
――「情熱は武器になる」と感じられる本作ですが、ご自身にとって俳優としての武器だと思うものはありますか。 眞栄田:顔面が変わることでしょうか。もちろん髪型や衣装などで雰囲気は変わりますが、僕は気持ちによっても顔面が変わるんです。顔つきではなくて、顔面(笑)。本作でも冒頭とクライマックスの八虎では、違う顔面をしているなと。自分でも不思議だなと思います。 高橋:そこに存在するための努力を惜しまないことです。今回で言うならば、「ユカちゃんとして存在するためには何をするべきなのか」と考えたりする時間がとても好きで。役づくりのために減量に挑んだり、ネイルやエステに通ったり、ストレッチをしたりといろいろなことをしましたが、ユカちゃんを見た人に「かわいい」と思ってもらえるように頑張りました。ここまで「かわいくなりたい」と思ったのは初めてです。八虎とユカちゃんが2人で絵を描くシーンに向けて体づくりをして、あそこまで自分を追い込んだのも初めてのこと。追い込むことすら、気持ちよく感じました。 板垣:武器になるのか、良いのか悪いのかわかりませんが、僕は常に「何も決めずに生きていたいな」と思っていて、水のようにありたいと思っています。 眞栄田:水のよう! なんだかすごくわかるな。 板垣:目標を決めたとしても、人間というのは形が変わってくるものだと思うんです。それならば出会う人、出会うものから吸収をして、その瞬間、瞬間を大事にしていきたいと思っています。 ――八虎はダメな自分も受け入れて、ありのままの自分で前に進んでいこうとします。皆さんにとって、以前はコンプレックスだったけれど、今は受け入れられるようになったというご経験はありますか? 眞栄田:僕は中学、高校生の頃はものすごくカッコつけていて。自分の能力以上のものを持っているようなフリをしたり、プライドが高い人間だったように思います。でもこの仕事を始めてみると、周りには自分よりも優れている人ばかり。カッコつけているのは、ダサいなと思うようになりました。だから今は、プライドはまったくないですね(笑)。本当の自分って何だろうと考えた時期もありますが、今はダメな自分も自分だし、それを磨いていきたいなと思っています。「これが自分だ」と言える自分になりました。そういった部分もそうですし、八虎を見ているとものすごく自分と重なって。心から共感できる役だったなと感じています。 高橋:コンプレックスとは違いますが、負けず嫌いな自分でよかったなと思っています。生まれた時からそうだったのではと思うくらいの負けず嫌いですが、俳優業は勝ち負けがあるものではないので、自分で頑張る源を見つけないといけないお仕事だと思っていて。ライバルが自分の中にいるような感覚で、僕は負けず嫌いだからこそ頑張れるんだなと感じています。 板垣:僕は細かいもので言えば、1年前、1ヵ月前、1週間前の自分を恥じらう人生ですが…。 眞栄田&高橋:あはは! 板垣:コンプレックスに思っていたこと、たとえば周囲に好かれる人って、明るい人や楽しい人かなと思いますが、僕は温度が低いようなところがあって。でもそんな僕だからこそできることもあるのかなと仕事を重ねる中で身に染みて感じられるようになりました。 (取材・文:成田おり枝 写真:高野広美) 映画『ブルーピリオド』は8月9日より公開。