9月急失速のカープ「厳しさが足りなかったところはなかったか」佐藤義則氏が新井野球を分析
9月を首位で迎えた広島だったが、まさかの急失速で6年ぶりのリーグ優勝どころが、クライマックスシリーズ進出の3位確保さえも厳しい状況になってきた。9月は4勝18敗。1日に今季最多14あった貯金もあっという間に底をつき、借金生活にも転落した。 デイリースポーツ評論家の佐藤義則氏は「ここまで落ちてしまうとは予想できなかった」と前置きした上で、負けが込んだ要因には、打線の得点力が上がらなかったことを挙げた。「一発で流れを変えられるようなホームランバッターがいない分、しぶとくつないで点を取っていく戦いをしないといけないが、そういう攻撃ができていない」と指摘する。「連打が出ればいいんだけど、連打なんて、そう簡単に出るものでもない。ならどうするかというと、走者が出れば、次の打者はアウトになったとしても進塁打で進めるとか、3番や4番にも送りバントさせるとか、そういう1点を取りにいく野球が徹底できていないように感じる」と話す。 26日現在、広島のチーム打率はリーグ最下位の・239と低迷。佐藤氏が指摘するようにチーム本塁打も12球団最少の51本で、無得点試合は24を数える。多くの援護が期待できない中、懸命に踏ん張ってきた投手陣だったが、ここにきて、そのしわ寄せも出てきた。8月を終えた時点でチーム防御率はリーグ1位、失点数もリーグ最少だったが、9月に入って急激に悪化している。 「いい例が大瀬良なんだけど、開幕からずっと防御率1点台で投げ続けていても、勝ち星が6つしか付いていない。森下や床田にしてもそう。9月に入って打たれているから防御率は下がってきたけど、2人とも8月まではずっと1点台で頑張ってきた。もっと勝っていてもおかしくない。救援陣も同様で、なんとか8月までは頑張ってきたけど、ここにきて持ちこたえられなくなってきた」と佐藤氏。投手目線から「(先発投手は)2、3点取られても援護してもらえると思って投げるのと、1点も取られてはいけないと思って投げるのとではプレッシャーが全然違う。特に優勝がかかった終盤戦に入り、先に点を取られてはいけないという気持ちが空回りしている」と話す。 その結果、投打の歯車が完全に狂い、度重なる連敗を繰り返している。「今の広島は勝てないチームの典型的な姿。リードしていても選手は勝っている気がしない。一つの四球だったり、一つのミスからチーム全体が浮き足だってしまう。逆転負けが多いのも勝てないチームの特徴」。9月11日の巨人戦(マツダ)では2点リードの九回に守護神・栗林が四球をきっかけに、1死も奪えず自己ワースト6失点の大炎上。この回9点を失って逆転負けし、9月を象徴する敗戦となった。 新井監督についても言及した。「選手と一緒になって盛り上がるのは、新井監督の良さでもあり、キャラクターなのは分かるが、どこか厳しさが足りなかったところはなかっただろうか。たとえば、負けている試合で自分のチームにタイムリーが1本出たからといって笑顔を見せたりするのは違うのではないか。負けているのだから笑顔は見せるべきではない。監督たるもの、もっとどっしりと構えてほしい」。これまで野村克也氏、星野仙一氏ら名監督の下で長年、コーチを務めてきた佐藤氏だけに、その言葉には重みがある。