【西本聖】巨人に「油断」大失速の広島に逆転負け V決定まで惜しげなく投手起用してもいい時期
<広島5-4巨人>◇21日◇マツダスタジアム なんと表現したらいいだろう。優勝に向けたラストスパートで勢いに乗ってきた感じのある巨人が、優勝争いで大失速している広島を相手に逆転負けを喫した。展開的にも広島は2試合連続でけん制死するなど、信じられないようなボーンヘッドが続いていた。ここまで踏ん張ってきた投手陣にも疲れが見えはじめ、個人的には「もう逆転優勝は諦めてしまったのかな」と思うような試合が続いていた。そんな緩んだ雰囲気が、巨人を油断させて逆転負けを招いてしまったように見えた。 【写真】ベンチで涙を流す巨人浅野 3点をリードした8回裏、マウンドには勝ちパターンで登板するケラーが上がった。ところが先頭打者の林にレフト前ヒットされ、2死から矢野にもライト前ヒット。2死一、三塁となって3番の秋山を迎えた。ケラーと秋山の通算対戦成績は10打数3安打の3割で、変則左腕の高梨は28打数5安打で1割7分9厘。秋山の後は小園、坂倉と左打者が続くだけに「秋山に回ってきたら高梨でいく」という準備があってよかった。 もちろん、ケラーには信用がある。続投させてもシングルヒットなら1点で済むし、同点3ランさえ打たれなければいいという考えができる。しかし秋山にタイムリーを打たれ、2死一、三塁で小園を迎えた。ケラーと小園は6打数2安打(3割3分3厘)で、高梨は12打数3安打(2割5分)。2人の比較なら高梨をリリーフさせたのは間違っていない。しかし急きょ登板したせいか、高梨は頭の中の準備ができていなかった。 一塁走者は代走で俊足の羽月。ここで盗塁されれば同点の走者が得点圏に進むが、高梨は1球もけん制を投げなかった。あっさりと初球に盗塁を決められ、小園にはライト前に同点タイムリー。ここで右翼の浅野がなんでもないゴロを焦って痛恨の後逸をしたが、盗塁がなければエラーはしなかっただろう。痛恨の流れで勢いに乗せてしまった広島に逆転負けを許した。 一戦必勝ならば、秋山か小園の場面で抑えの大勢をつぎ込む手もあった。大勢と秋山、小園の対戦成績を見ると、秋山は4打数0安打で、小園も7打数0安打。この後、阪神と2連戦があるため、イニングまたぎは回避したかったのだろう。しかし前回の広島戦では大勢にイニングまたぎをやらせている。残り試合は少なく、優勝が決まるまで惜しげなく投手を起用してもいい時期だった。 今の広島に8回以降で3点をかえす力も勢いもないと考えたのかもしれない。これを「油断」と呼ぶ。この敗戦を教訓とし、阪神との大一番に挑んでもらいたい。(日刊スポーツ評論家)