第5話はほぼオリジナル展開…窪田正孝”藤竹”がこれまでにないほど怒ったワケ。 NHKドラマ『宙わたる教室』考察レビュー
前例がないとしてエントリーが拒否されてしまう…。
「背伸びをする必要はない」「やってみてダメだったらやめればいい」、そんな気持ちもありながらスタートしたコンクールのための研究だったが、熱中すると、この科学部は強い。 クレーターの衝突を実験テーマにすることが決まると、観るだけでなく書き残したほうがいいという藤竹のアドバイスをもとに、写真も撮っておこう、砂を固めておくことはできないのか?とそれぞれがアイデアを出し、形にていく。そして、即席にしては上出来と藤竹にお墨付きをもらうほどの資料を作り上げた。 しかし、大会本部は定時制高校参加の前例がないとして、科学部からのエントリーを拒否した。機会すら与えられなかった。部員たちの苦労を、がんばりを、間近で見てきたからこそ、藤竹は「そんなの理由にならない!」と声を荒げた。 このときの藤竹は映らなかったが、これまで見せたことのない怒りを滲ませた表情をしていたのだろう。そこに居合わせた岳人と佳純が、驚いた様子で顔を見合わせていた。 藤竹がこの一件を大学時代の同期である相澤(中村蒼)に話すと、「世の中そういうもんだろ」と一蹴される。藤竹の「本当にそう思うか?」という目がまっすぐに相澤を、わたしたち視聴者を射る。 相澤は自分たちには「科学の発展に寄与する義務がある」とも言った。科学のエリートとして優遇されてきたという自覚があるからこその言葉で、相澤には相澤の計り知れない苦労がありそうだ。でも、だからといって、科学はエリートたちのためだけのものだろうか? 岳人や佳純、アンジェラ(ガウ)や長嶺(イッセー尾形)のように、それまで科学に精通していたわけではないからこその視点が、新しい気付きを与えたことが過去にも何度だってあったはずだ。それなのに、門前払いという仕打ち。どちらが科学への、そして学問への冒涜だろうかと考えさせられる。
科学部が秘めた無限の可能性
気を落とす部員たちを、藤竹は天体観測に誘う。明確な言葉で励ますことはしない藤竹に代わってみんなを鼓舞したのは、岳人たちと同じクラスの麻衣(紺野彩夏)だった。キャバクラで働きながら1人で子どもを育てている麻衣。 シングルマザーの子どもは可哀想、夜に保育園に預けるなんて可哀想、そんな偏見に満ちた言葉に日々さらされている麻衣は、そいつらは助けてくれない、だから腐ってる暇はない、と言う。 そして、「大事なのは、自分たちがなにをしたいか」「やったもん勝ち!」と。麻衣は親権を持ち続けるために、いつか自分のお店をもつという夢のために、定時制高校に通っているのだった。 藤竹が顔をほころばせたのは、麻衣の言葉に藤竹自身も励まされたからだろう。見上げた夜空にはたくさんの星が瞬く。新宿でも、こんなにたくさんの星が見えるなんて。 その星だって、まだ人間が知らないことだらけで、それはつまり、無限の可能性があるということ。藤竹のつくった科学部も、まだまだ多くの可能性を秘めている。