まるで役に立たないロシアの先端防空システム、その理由を徹底分析
■ 5.ロシア軍防空兵器が破壊された原因 今まで述べてきたように、今年4月以降、1日でS-400防空システムの多くの発射機やレーダーが破壊された。 そして、破壊された防空システムは車両移動中で射撃機能が停止していたのではなく、展開し射撃態勢を採っていながらATACMSの命中弾を受けて、破壊されてしまったのだ。 このことはS-400の性能では、明らかに弾道ミサイルを撃ち落とせないことが今回の戦争で証明されてしまったことになる。 機能の面で見ると、(1)捜索、(2)ミサイル追随、(3)射撃管制(未来位置予測と誘導指示)、(4)ミサイル発射、(4)-1初期誘導までは、パトリオットミサイルと同じ能力であると考えられる。 だが、大気圏内でミサイルに命中するかどうかが決まる(4)-2終末誘導機能が未完成あるいは欠陥があるのではないかと考える。(図1・図3参照) 図3 ロシアの防空ミサイル発射から命中するまでの誘導イメージ S-400防空システムを保有する部隊がミサイルで破壊されることになってしまったのは、上記のほかに別の理由もある。 それは、部隊の訓練練度が低いことや兵器の展開位置を上空や地上からはっきりと分かるように露出してしまったことであろう。 ロシアの防空システムの性能は公表されたほどのものではなく、また部隊の訓練練度も低く、その結果、防空システムが短期間に米国製のATACMSに撃墜されてしまったのである。
■ 6.ウクライナはミサイル戦では勝利 ウクライナは、パトリオットミサイルを配備した地域では、ロシアが発射する地上・空中発射の弾道ミサイルや巡航ミサイルを、飽和攻撃ではなく10発前後であればほとんど撃墜している。 一方、ロシアはウクライナから発射されたATACMSを1発も撃ち落とせていない。 ということは、両軍が短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルを撃ち合えば、ウクライナはそれらをほとんど撃墜し、ロシアは全て撃ち漏らすことになる。 ウクライナにミサイルの量さえあれば、ミサイル戦では完全勝利ということになる。
西村 金一