国家権力を介入させない『私学の自由』と『いじめ対応』苦悩する生徒や保護者「行政機関なり役所なりが助けてくれると思っていた」学校に不信感...でも行政は指導できず
福岡で命を絶った私立高校の16歳
福岡県北九州市にも私立高校の不誠実な対応に苦しんだ保護者がいます。 (瑞菜さんの父親 鈴木賢二さん)「かばんのななめがけするひもだと聞いています。向こう側向きに体を落として」 2017年4月、北九州市内の私立高校2年生の鈴木瑞菜さん(当時16歳)が自ら命を絶ちました。亡くなった日の朝に瑞菜さんが同級生に送ったラインが残っています。 (瑞菜さんが送ったライン)『あたしに何かあったらあなたたちのせいやけね。後悔してもしらんけ』 (鈴木賢二さん)「これは瑞菜の遺書だろうということで。仲間はずれだったり、わざと5人グループの中の瑞菜をのぞいた4人で行動したり、女の子グループ5人の中でそういうことが起きているというのは家で娘がいつも自分の妻と話はしていたので。その子たちが謝りにきてくれれば、もうそれはそれで…守れなかった責任は自分たちにあるので、ということで学校には説明をしました」 校内アンケートでも『瑞菜さんがいじめられていた』などとする回答が複数寄せられました。ところが学校は『いじめではなく友達同士のトラブル』だと主張。第三者委員会の調査後はいじめの存在を認めましたが、自殺との『因果関係はない』と結論付けました。自殺から7年たったいまも学校は見解を変えていません。 (鈴木賢二さん)「学校の態度や接し方をみると、なにか瑞菜のことをばかにされているような気がして。“(自死の)原因がない”ってやるせないよなっていうふうにずっと思っていて」
「私学の自由」認めた法律の壁
それぞれの親子の前に立ちはだかった2つの私立高校。学校側といじめを訴える家族との隔たりは大きいように思えます。私立学校でのいじめ問題に行政が介入することはできないのでしょうか。 (大阪府教育庁私学課 伊藤義孝参事)「私立学校につきましては、学校を設置しているのが学校法人ですから、指導はできないのが現状なんです。何が適正で何が適正でないというのはなかなか言いづらいところではあります」 私立学校には国家権力を介入させないという「私学の自由」を認めた法律があるため、自治体の教育委員会はいじめ対応についてたとえ保護者から相談があったとしても、学校を指導することが原則できないのです。 教育委員会のサポートを受ける公立学校との差について専門家は次のように話します。 (神戸大学人間発達環境学研究科 山下晃一教授)「私学の自主性を尊重することと、どういうふうに折り合いをつけていくのか。いじめの問題は人命にかかわる、あるいは財産にかかわる、なにより子どもたちのクオリティオブライフ(生活の質)を下げることになるので。ぜひ大人の知恵を集めて、いい仕組みづくりをしていくことが必要になるかなと思いますね」