ミャンマー クーデター以来の「転換点」 軍と抵抗勢力の戦闘激化…未来はどうなる?
ミャンマー軍がクーデターによって全権を掌握して、まもなく3年。各地で軍と抵抗勢力の戦闘が激しくなり、軍の支配地域が失われる大きな「転換点」を迎えている。その一方で、市民の犠牲は増え、国内はますます不安定になっている。ミャンマーの未来はどうなるのか? (NNNバンコク支局 富永大介)
■ミャンマーで軍と少数民族武装勢力の戦闘激化
ミャンマーにいる現地の記者から切迫した連絡が届いたのは、2023年11月中旬だった。 「これから1か月後、2か月後、この国はどうなってしまうのか? 何が起こるか分からないから米や薬を少し多めに買っている」 ミャンマー各地で軍と抵抗勢力の戦闘が激しくなっていた。そんな状況に、現地記者はミャンマーの行く末を案じていたのだ。 21年2月に軍がクーデターによってアウン・サン・スー・チー氏を拘束し、全権を掌握してから、まもなく3年。今、ミャンマーはそのクーデター以降で最も大きな転換点を迎えている。軍の支配地域が脅かされているのだ。
■「1027作戦」少数民族武装勢力が一斉攻撃
きっかけは、23年10月27日。ミャンマー北東部を拠点とする、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)など3つの少数民族武装勢力が、軍に対して攻撃を開始したのだ。「1027作戦」と呼ばれる一斉攻撃。「国軍の攻撃から国民の命を守り、軍事独裁政権を終わらせる」と声明を出した。 ほかの民主派勢力も共鳴するように各地で戦闘が拡大し、その地域は国土の3分の2以上に及んでいるという。これまでに武装勢力側が300以上の軍の拠点を占拠し、多くの兵士が投降するなど、軍の劣勢が伝えられている。 ミン・スエ大統領代行は「国家が分裂する」と危機感をあらわにした。地元メディアによると、軍トップのミン・アウン・フライン総司令官が「政治的に問題を解決する必要がある」と発言。これまで抵抗勢力を「テロリスト」呼ばわりしていただけに、その切迫感が伝わってくる。
■軍が劣勢に…そのワケは?
なぜ、ここまで軍が劣勢に立たされているのか? ミャンマー情勢に詳しい京都大学の中西嘉宏准教授は「雨期が終わる時期を見計らって攻撃を仕掛けている。さらに、武装勢力が連携して奇襲を仕掛けることで、軍は防衛線を維持できなくなっている」とみている。抵抗勢力同士が入念に準備をした上で作戦を実行したことが、大きな要因だと指摘する。 さらに、「交代の兵士を前線に送ることができなかったり、補給もできなくなったりして、部隊が全滅する危機に陥り投降する兵士が多い」と話す。軍の士気も低下し、兵士の数も不足していると分析する。