【オークス・生情報】アドマイヤベル〝軽い追い切り〟の真意 勇気ある調整が結実へ
[GⅠオークス=2024年5月19日(日曜)3歳オープン牝馬限定、東京競馬場・芝2400メートル] 美浦ウッド単走で5ハロン69・9ー12・8秒(馬なり)。各馬がこぞって好調ぶりをアピールしたオークスの最終追い切りで、ひと際軽度の内容にとどめたのが、トライアルのGⅡフローラSの勝ち馬アドマイヤベル(牝・加藤征)だ。レース2日前の17日朝も南角馬場からゲートを確認。決戦前日の18日は美浦坂路4ハロン68・9秒と穏やかな内容に終始した。 調教をつける宮下助手は「(オークスは)スタンド前からの発走なんで。力を抜いて立てていて、駐立もうまくできていました。初めて中3週の競馬なので、状態を上げるというよりも疲れを残さないよう維持することに主眼を置いた調整。テンションもずっと変わらず、穏やかにこられています」とその意図を説明した。 デビューからここまでの過程で、極度に強い調教を課すとカイバが落ちてしまうことを陣営が把握した。前走時の直前追い切りもウッドで5ハロン69・6ー12・6秒と今回とほぼ同じ数字。ビッグレースの直前としては、多くの人が物足りないと感じる内容かもしれない。だがその一方で、この〝静〟に徹することこそ、勇気ある選択といえるのではないか。アドマイヤベルにとってベストの、レースでもっとも力を出せる調整方法を、GⅠの舞台であっても貫いただけだ。 「ガソリン満タンの状態で出走させたいですからね。調教でギリギリまで追い込むのではなく、あくまで競馬で力を出してもらうために」と宮下助手。大一番の前にハードな調教を行い、見た目には素晴らしい動きで素晴らしいタイムであっても、結果的にオーバーワークになってしまい、レースで力を出せなかった…そんなシーンは過去に幾度となくあった。牝馬の場合は特にである。名伯楽・藤沢和雄元調教師が晩年に手掛けたグランアレグリアも、直前は極度に控えめな追い切りだったことが思い出される。 加藤征厩舎にとってこのオークスは、2018年にトーセンブレスがレース前日に出走取消となった苦い経験がある(左前挫石のため)。この春はやはりトライアルのニュージーランドTを勝ったエコロブルームが、NHKマイルCの当週に脚元を傷めて断念した(右第3中手骨々折)。数々の経験であり歴史も全ては今のため。そんな仲間たちのためにも、アドマイヤベルが厩舎一丸となった渾身の走りを見せてくれる気がしてならない。
東スポ競馬編集部