貧困で「壮絶ないじめ」に遭い、学校に通うのをやめた男性が、最愛に妻についた「最大のウソ」…ばれて離婚も覚悟した
貧しさ故に同級生から盗みを疑われ、小学2年生で学校に通うのをやめた西畑保さん(88歳)は、12歳でパン工場で働き始めたものの「読み書きができないこと」で苦境に立たされ続けてきた。電話で受け付けた注文がメモできず、仕入れに買い物に行ってもメモも読めない……。 【写真】ドラマ共演の「夫婦役」で本当に結婚した芸能人…えっ、あの2人も! そんな西畑さんが読み書きを覚えようと64歳で夜間中学に通い始めた。その理由は長年連れ添ってくれた妻にラブレターを書くためだった。 <【前編】貧しさゆえに差別され不登校に…日本で「読み書きができない現実」に直面した男性の「壮絶な人生」>に引き続き、ご自身がその胸の内を綴る。
ばれたら離婚される
結婚はあきらめていました。しかし、35歳のとき、お見合いの話がありました。ぼくは読み書きができないことについて隠したまま、見合いをしました。とてもきれいな女性です。皎子(きょうこ)さんと言いました。 ぼくは結婚を望みました。 デートでは読めもしないのに新聞をたずさえ、読んでいるふりをしました。そして、字が読めないことを隠したまま結婚しました。ばれたら離婚されると思い、何とかごまかしていました。 しかし、一緒に暮らしているのです。いつまでもうそをつき通せるはずがありません。あるとき回覧板の署名を巡り、ばれてしまいます。 見合いのときからだまし続けているのです。最も大切にしたい人にうそをついてきたのです。 ぼくは離婚を覚悟しました。 ばれたときのことは、今も鮮明に覚えています。ぼくの体は小刻みに震えました。妻が聞きます。 「あなた、どうしたん?」 ぼくは妻の顔がまともに見られません。妻は何かおかしいと感じています。ぼくは絞り出すように言葉を発します。 「よう、書かん、のや」 妻は、自分の名前が書けないなんて冗談だと思ったようです。 「何言うてんの。早う書いてよ」 時間だけが過ぎていきます。妻が沈黙を破りました。 「ほんまに? よう書かんの?」