愛知県民すら知らない「豊橋うなぎ」のこだわり 県収穫量8割以上占める「一色産うなぎ」との差
■こだわっているのは飼育に適した水づくり 池上げしたうなぎは、本社へ運ばれて立場(たてば)と呼ばれる施設で1~2日、餌を与えずかごの上から水を流し続ける泥抜きを行う。泥を吐かせることで臭みが少なくなるだけではなく、身が締まって余分な脂も落ちるため、より一層美味しいうなぎになるという。 夏目さんは池上げしたばかりのうなぎを裂いて、加工主任を務める姉の牧内美奈子さんに手渡した。 「今から直売所で焼きますから、実際に食べてみてください」と、夏目さん。うなぎは大好物なので嬉しい反面、一抹の不安も。何しろ、さっきまで池で泳いでいたうなぎゆえに泥臭くなるのではないか。そんなことを考えていたら、直売店に到着した。
炭火と同じ遠赤外線効果があるうなぎ専用の焼き台で、まずは皮目からじっくりと焼いていく。カリッと香ばしく焼き上げたら、ひっくり返して身を焼いていく。したたり落ちる脂で焼き台から炎が上がる。 「まずは白焼きで食べてみてください」と、牧内さん。 おおっ、皮がパリパリで身はフワフワ! かむごとに皮と身の間にある脂があふれ出して、口の中でスッと消えていく。まるでマグロのトロのような脂の口溶けがたまらない。白焼きがうまいというのは、本物の証しである。
タレを何度も重ね塗りした蒲焼も食べさせてもらったが、気にしていた臭みはまったくないどころか、そこらのうなぎ屋で食べるよりもうまい。夢中で食べていると、直売所に夏目さんがやってきた。 「豊橋うなぎは地下水を使っているので臭みが少ないのだと思います。うなぎはきれいな水では餌を食べないので、自然に近い環境を作らなければなりません。豊橋の養鰻はうなぎの飼育に適した水を作る技術に長けていると思っています」(夏目さん)
一色産うなぎは近くを流れる矢作川の水を使っている。自然環境のまま飼育できることがメリットとなるが、泥臭さが出てしまうのは否めない。夏目さんによると、養鰻池1坪あたりのうなぎの数も重要で、豊橋うなぎは100~150尾。養鰻が盛んな九州ではその倍にあたる200~300尾になるという。 「うなぎが多すぎると、ストレスにもなりますし、すべてのうなぎに餌が行き渡らないこともあります。養鶏で例えると、ブロイラーと平飼いの違いくらい味に差が出ます」(夏目さん)とか。