「足がちぎれてもいいくらいのつもりでマウンドに立ちました」DeNA日本一呼んだ手負いのエースの粘投
手負いのエースの奮闘なくして、DeNAの26年ぶり日本一はなかった。本拠地で連敗を喫し、迎えたソフトバンクとの日本シリーズ第3戦(10月29日・みずほペイペイ)。東克樹投手(29)は不退転の覚悟で復帰戦に臨んでいた。 「足がちぎれてもいいくらいのつもりでマウンドに立ちました」 阪神とのCS第1ステージ(10月12日・甲子園)の初戦で左太もも裏肉離れを発症した。中16日。完治にはほど遠い状態だったが、大黒柱としての使命感が痛みを上回った。打たれても打たれても、粘り抜いた。7回10安打1失点。決死の力投がシリーズの流れを変えた。 体はボロボロだった。2年連続で開幕投手を務め、開幕8連勝。昨季から続く横浜スタジアムの連勝は11まで伸ばした。今永、バウアーが去ったチームで、唯一無二の柱となった。8月中旬からは中5日でフル回転。「疲れは取れないですよ。めっちゃ疲れてます」。登板2日前のブルペン投球をやめ、酷暑のデーゲーム前は室内で調整。消耗を最小限にとどめ、戦い抜いた。 ギリギリの状態で駆け抜けた背番号11を支えたのは家族の存在。自宅に帰ると、愛妻のおいしい料理が待っていた。保育園に通う長女をバス停まで送る時間は、不思議と疲れを忘れられた。時に10時間以上の睡眠をとって疲労回復に努めるロングスリーパーの東のため、登板間隔が短くなると、まな娘は起こしに来なくなった。 復活を遂げた第3戦から4連勝で日本一。シーズンではリーグトップの183イニングを投げた新エースは、実感を込めて言った。「本当に家族に支えられている。感謝です」。家族の愛に包まれながら、身長170センチの鉄腕は名実ともにエースになった。(DeNA担当・内藤 菜月)
報知新聞社