教育機会確保法施行1年 不登校の現場どう変わったか
新学期がスタートし、「学校に行きたくない」「学校に行けない」という思いを抱え始める子どもが出てくる4月。どうしても学校に行けない子どもに対し、「休んでもよい」と認めた法律「教育機会確保法」ができて、2年目となる今、現場はどう変わったのか。不登校の子どもを受け入れるフリースクールの運営などを担う支援者からは「行政との連携が生まれた」など評価する声がある一方「まだ法律が浸透していない」との指摘も上がっている。
「子どもがのびのびしだした」評価する声も
今年3月末、法律の施行後初めて、フリースクール(不登校の子どもが学んでいる民間施設)や不登校支援にかかわる専門家が文部科学省に集まって、現状を報告する会議が開催された。大阪で不登校の子どもたちの居場所作りなどを行っているNPO法人「トイボックス」の白井智子代表理事は「(教育機会確保法ができて)子どもが本当にのびのびしだした。自分たちが悪いんじゃないんだと(子どもに)響いている」と報告。 不登校を研究テーマとしている伊藤美奈子・奈良女子大教授(教育臨床心理学)も「フリースクールと(教育委員会が運営する)適応指導教室が一緒に不登校に関する講演会を企画するといった動きがあった。今まではそういうのがなかった。講演会に参加したが、(民間と教委の)双方が理解し合えたのでは」などと発言した。
教育機会確保法とは、不登校の小中学生が、学校以外の場でも学べる機会を確保するため、施策を講じることを国や自治体の責務とした議員立法。昨年2月に施行された。つらいときは学校を休んでもよいと「休養の必要性」を明記し、フリースクールなど学校外で行われる学習活動の重要性を認めている。また、国や自治体が民間のフリースクールなどと連携して支援するよう求めた。 この法律が新たにできた背景には、不登校の子どもたちが減らないという現状がある。文科省の2016年度の調査では、小中学校で不登校となっている子どもの数は13万3683人で前年度より増加した。1997年度以降、不登校の子どもたちの数が10万人を下回ったことはない。 こういった子どもたちを支えるため、不登校の子どもたちが学ぶ民間のフリースクールや、教育委員会が運営する「適応指導教室」などが各地に設置されてきた。また、自宅で学習する「ホームスクーリング」を選択するケースもあり、「学校以外」で学ぶ子どもたちを支援するために法律が整備されたのだ。 法律の成立を受け、新しい学習指導要領には初めて「不登校児童への配慮」が盛り込まれ、小学校の学習指導要領の解説には以下のように記述された。 「不登校児童については、(中略)登校という結果のみを目標にするのではなく、児童や保護者の意思を十分に尊重しつつ、児童が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」