人口今より約30万人減でも「肯定的に受け入れる」滋賀県・三日月知事
昨年10月、日本の総人口(外国人を含む)が大正9(1920)年の調査開始以来、はじめて減少に転じたことを受け実施した、滋賀県の三日月大造知事へのインタビューで、三日月知事は「直近の5年間は人口減少を食い止める施策に力を入れたいが、長期的には、人口急増時代に失ったもの、住む空間の狭さや人と自然との関わりなど、これまで我慢してきたものを取り戻す施策を進めたい」などと述べ、人口減少によるプラス面を活かす施策の重要性を訴えた。人口減少対策として、琵琶湖の保全や都市公園面積の増加、空き家のリノベーションなどを進めゆとりある生活環境の実現に取り組むとしている。 県の計画では2060年の人口目標を約128万人とし、何もしなかった場合と比べて約16万人の上積みを見込み、全世代の人数がほぼ同じとなる人口構造を目指している。このことについては「簡単なことではない」との認識を示した。 その上で「人口減少は不可避。何もしなかったら2060年には110万人台になってしまうが、人口減少そのものは110万人であれ、120万人であれ、むしろ肯定的に受け入れるべき」とし、「目標を持って、あるものを活かして、どうやったら人に来てもらえるんだろう、住んでもらえるんだろうと考えるプロセスにこそ意味がある」などと話した。 また、人口減少と交通インフラの関係についても触れ、予算のかかる道路整備において「必要なものには応えていくが、運転をこれから10年20年続けられますか」などと地元住民にも理解を求め始めているとし、「今の道路をもっと、例えば歩いてでもそうだし、バスもちゃんと通っているとか、そういった形に変えたり、磨いたり、整え直したりすることも大事。そういうことが、この人口減少局面を迎えた地域作りの、非常に大事なことかなとも思っている」などと話した。
滋賀県の人口は戦後、85万人前後で推移していたが、企業進出や京阪神のベッドタウン化、JR新駅設置などにより1967年から増加し続け、2008年には140万人を超えた。全国的に見て、2010年~2015年に人口が増加したのは、滋賀を含めて47都道府県のうち8都県しかなく、近年珍しい「人口増加県」だったが、2014年10月1日現在の人口(推計値)は前年比で48年ぶりに減少に転じている。 これを受け、2015年10月には人口減少を食い止めながら滋賀の強みを伸ばすための計画「人口減少を見据えた豊かな滋賀づくり総合戦略」を策定。戦略では、2020年に出生数を年1万3000人まで回復させ、その水準を維持し、合計特殊出生率を2040年には1.94に、2050年には2.07にすることを目標に掲げている。 【三日月大造(みかづき・たいぞう)】 一橋大学を卒業後、1994年JR西日本入社。2003年、民主党の候補者として衆院選に滋賀県第3区から出馬し、初当選。国土交通副大臣などを務める。4期目の2014年に民主党を離党して滋賀県知事戦に出馬し当選。2014年7月から滋賀県知事。現在1期目。 ※インタビューの全文は【連載】「人口減少時代 三日月大造・滋賀県知事に聞く」に掲載