「仮面浪人」は許される行為なのか?――「東大を再受験した京大生」が引き起こした100年前の大論争
一高の谷山は、この年から急に京大の他大受験に対する取締が厳格になったことを指摘しているが、それは京大当局の強い危機意識によるものだろう。実は、当初杉之原を支援していた吉野が佐々木との面談後に態度を急変させたのは、「学生が皆東京を望んで転校すると云ふ事になれば京都の大学も困る」という、京大側の事情を呑み込んでのことだった(前掲『読売新聞』)。 ※本記事は、尾原宏之『「反・東大」の思想史』(新潮選書)に基づいて作成したものです。
尾原宏之(おはら・ひろゆき) 1973年、山形県生まれ。甲南大学法学部教授。早稲田大学政治経済学部卒業。日本放送協会(NHK)勤務を経て、東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。専門は日本政治思想史。首都大学東京都市教養学部法学系助教などを経て現職。著書に『大正大震災 忘却された断層』、『軍事と公論 明治元老院の政治思想』、『娯楽番組を創った男 丸山鐵雄と〈サラリーマン表現者〉の誕生』、『「反・東大」の思想史』など。 デイリー新潮編集部
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