村上宗隆も山川穂高も指摘した「飛ばないボール問題」その真相を選手に直撃! 多くの打者が証言した感覚とは…なぜここまで本塁打が減るのか?
「ボールが飛ばない」は今年に始まったものではない
同時にもう1つ、気になるのはボールが飛ばないという声が、今年に始まったものではないということだ。 2022年には当時西武の山川穂高内野手(現ソフトバンク)が「明らかにボールが飛ばなくなっている」と指摘。実際、両リーグの合計本塁打数は21年の1449本(1試合平均1.688本)から、22年には145本減の同1304本(1.519本)まで減少している。 実は山川が「飛ばなくなった」と指摘した22年にも、ボールの保管方法に、もう1つの変化があった。 ボールの個別包装の仕方が、それまでのアルミ箔をビニール袋で包んだものから、「GL BARRIER」という蒸着フィルム素材の袋に変更されているのである。長い間、新しい試合球を下ろすときにはアルミ箔を剥いで取り出すという“儀式”のような手順があったが、いまは袋を破って取り出すようになっている。「GL BARRIER」という蒸着フィルム素材は、お菓子の袋などに使われるもので、保管時の湿度、温度の影響を最小限にし、紫外線の影響による変色も防いで、アルミ箔と同等以上の状態でボールを保管できるとされている。
山川穂高も「飛ばなくなっている」と語る真相とは…
ただ、ボールの包装がアルミ箔から「GL BARRIER」に変更になったその年に、年間の本塁打数は145本減少し、山川は「ボールが飛ばなくなっている」と語っているのだ。 こうした個別包装の方法や保管する箱の変化がどれくらいボールに影響を与えているのかは、明確ではない。2度の保管方法の変化と本塁打の減少が偶然に一致しているだけかもしれない。ただ保管方法や保管場所の環境によって、ボールの水分含有量を含めた質の変化が生まれることはある。湿気を含んだボールが飛ばなくなる、というのも紛れもない事実なのである。 メジャーではかなり厳密に湿度と温度管理をした倉庫で試合球は保管されているが、日本ではそこまでボールの品質保持のための環境が整っていないのが現実だ。 NPBも「違反球問題」を経て厳しい検査を行なっているので、ボールそのものが規定外ということは考えづらいが、それぞれの球団で保管されている試合球の検査を行なっているわけではない。となれば事前検査は通過していても、実際にゲームで使用するときには、そうした外的影響で反発係数などの数値が変化している可能性も否定はできないところだろう。 いま日本のプロ野球は、極端に本塁打が減少して、ボールが飛ばないという現実を目の当たりにしているのである。原因究明のためにも、NPBは一定の頻度で各チームで保管している試合球のサンプリング検査などに乗り出すことも必要ではないだろうか。
(「プロ野球亭日乗」鷲田康 = 文)
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