危険!突然意識を失うのに見逃して…全国でも少ない「失神外来」に集まる患者 医師警鐘「放置すると5年後生存率50%の場合も」
長野県松本市の病院、外来開設1年で50人受診
松本協立病院(長野県松本市)が昨年7月に「失神外来」を開設して1年余になり、これまで県内外の50人ほどが治療を受けた。失神は不整脈や自律神経の異常などにより、脳全体の血流が低下して突然意識を失う症状で、通常数秒から数分以内に後遺症なく意識が戻る。約千人に6人の割合で発症し、国内で年間80万人ほどの患者がいるが、専門外来は国内でも少なく、県内でも珍しいという。担当の上迫隼太医師(34)は「どこを受診したらいいか分からない患者さんの道しるべになれば」と話す。 【写真】失神の原因を判断するために用いる「植え込み型心電計」
すぐ意識が回復するため見逃されることも
失神は血圧や心拍数の問題で生じることが多く、同病院では心臓病を専門とする循環器内科で診療に当たる。心臓疾患が原因で発症する場合は危険性が高く、不整脈、弁膜症などで脳に血液を送る機能が低下した状態を放置すると、5年後の生存率は約50パーセントにまで低下するという。上迫医師は、意識がすぐに回復するため、受診しなかったり救急車をキャンセルしたりする例も散見されるが「見逃されると非常に危ない」と警鐘を鳴らす。
「てんかん」と思い込むケースも
また、脳神経細胞の活動で突然意識を失う「てんかん」と思い込み、脳外科を受診する患者もいるといい、的確な診断が求められるとする。
原因解明には問診が重要
診察では聴診器で心音を聞いたり、心電図やエコーを用いたりして検査。問診が重要だといい、患者本人や目撃者などに倒れた当時の状況を聞き、原因を調べる。心臓疾患が原因の失神は予兆なく起きることが多いといい、症状が出たタイミングの心電図から原因を特定できるよう、体内に厚さ約3ミリ、長さ約4センチほどの「植え込み型心電計」も用いる。
医師「危険性が知られていない」
上迫医師は、県内外から受診者が訪れ手応えも感じる一方で、失神を危険と感じていない人も多く、危険性への周知が十分でない―という。「やっていることは地味だが、失神の原因を識別することは社会的な意義があり、しっかり解明していきたい」と話している。