各話ごと振り返る「不適切にもほどがある」の凄いポイント、最終回はルールを壊して未来を変えられるか
インティマシーコーディネーター(トリンドル玲奈)も登場し、セクシャルな表現の境界線と、タイムパラドックスの境界線を重ねて描いた。どちらも超えるとえらいことです。 ■予想だにしなかった急展開 第5話:隠しごとしちゃダメですか? 第3話に続いて盛り上がった回。だがそれはシリアスなほうに急旋回する。 純子の夫・ゆずる(錦戸亮、古田新太)が明かす、1995年1月17日の早朝の話。笑ってばかりいられない緊張が走った。
第6話:昔話しちゃダメですか? 「死ぬのがマイナスなんじゃなくて、むしろ大人になった渚っちにこうして会えたことがプラスなんだ」と自身の運命を肯定する市郎。第2話で、今できることをやると言っていた市郎はブレていない。どんな運命でも彼は“今”を生きる。そして市郎は純子を令和に連れていき……。 第7話:回収しなきゃダメですか? 令和にきた純子は美容師のナオキ(岡田将生)とデートする。ナオキは現代っ子で、デートしたからといって純子のことをさほど深く考えていない。
ちょうど、エモケンの新作ドラマ制作に関わっていた市郎は、ドラマに例えてナオキに物申すが、「僕、ドラマって全部通して見たことないんですよね」「6話とか7話だけ見て、その回が好きなら、僕にとってそれは好きなドラマです」とあっさり交わされてしまった。 ■「テレビ局の自虐」も描いた 第8話:1回しくじったらダメですか? 『金妻』(金曜日の妻たちへ)ふうパティオのある栗田(山本耕史)の家で、たった一度のあやまちであった不倫をいつまでも糾弾し続ける地獄のホームパーティー、第1話でポスターが出てきた小泉今日子の登場、令和のムッチ(磯村勇斗)が彦麻呂と、SNS向けのネタのてんこ盛り。皮肉にも、番組を見ていないSNSユーザーの反応を気にして番組を作っているテレビ局の自虐が描かれていた。
第9話:分類しなきゃダメですか? 諸事情で渚とゆずるの家で暮らすことになった市郎。家族で純子の墓参りにいく。 生真面目な渚は、会社でも家でも煙たがられていた。ご近所さんの冷たい視線にさらされた渚を、ゆずるがミュージカルシーンで救う。たったひとりの身内・渚を守ろうと「切り取らないで」と、病身なのに切々と歌って踊るゆずるが面白いやら感動するやら。 こうして振り返ると、基本的には、昭和の終わりーー1980年代を過ごした脚本家・宮藤官九郎(1970年代生まれ)や、プロデューサー磯山晶(1960年代生まれ)というバブル時代も経験している世代感が色濃く出たドラマであり、彼らの過ごしてきた時代を振り返り、令和と並べて、いいことと悪いことを検証していく構成は、宮藤、磯山と同世代の視聴者、彼らのドラマで育った視聴者にドンズバだった。