〝松くい虫病〟被害続出 市内で猛威、庭木や防風林が変色【宇部】
宇部市内でこの夏、松くい虫病が猛威を振るい、庭木や防風林のマツが枯れる被害が続出している。 造園業の岡本常盤園(野中1丁目)の篠原達也社長は7月以降、得意先の個人宅の庭にあるマツの大木の葉が茶色に変色する異変が相次いでいるのに気付いた。原因は松くい虫病だ。 5~7月に羽化した体長約3㌢のカミキリ(マツノマダラカミキリ)の成虫が半径4~5㌔のエリアを飛び回り、マツの皮を食べる際に、体内にいる体長0・6~1㍉の線虫(マツノザイセンチュウ)が樹体内に侵入。この線虫が樹体内で増殖して通水を阻害するため、木は衰弱して枯れてしまう。カミキリは衰弱したマツに秋に産卵し、翌年初夏に体内に線虫を持ったカミキリが羽化して再び食い荒らすというサイクルで、被害が広がっていく。 草江3丁目の枡田清吾さん(70)の庭では、戦前からあった樹高7㍍のマツが被害に遭った。台風10号の強風に見舞われた先月末、前日まで青々としていた松葉が一夜にして茶色くなって枯れてしまったという。周辺の個人宅の庭や山口宇部空港近くの空港通り沿いの防風林でも、茶色くなった木が何本も見受けられる。 県樹木医会の戸坂隆男会長(戸坂造園土木会長)は「夏の猛暑や台風でマツが弱ってしまい、松くい虫病が一気に広がった」と分析する。 林野庁によると、松くい虫病の被害は1979年度の約243万立方㍍をピークに長期的に減少傾向にあり、2022年度の被害はピーク時の約10分の1だが、依然として国内最大の森林病虫害という。 戸坂会長は「ピーク時の10分の1に減ったと言っても、松林自体が大幅に消滅したためにすぎない。植林しても管理が行き届かず、すぐに松くい虫病にやられる。県内でも自然の松林が残っているのは、管理がしっかりしている東岐波の波雁ケ浜と萩市の菊ケ浜、光市の虹ケ浜など数えるほどしかない」と警鐘を鳴らしている。