スクーが上場。“学ばない日本”と格闘した13年間…ダウンラウンドでも自信
オンライン学習サービスを手掛けるSchoo(スクー)が、2024年10月22日に東京証券取引所グロース市場に上場する。 【全画像をみる】スクーが上場。“学ばない日本”と格闘した13年間…ダウンラウンドでも自信 スクーは2011年、リクルート出身の森健志郎氏が24歳で創業した。新型コロナウイルスの流行によって従来の研修がオンライン化したことや、政府が国策としてリスキリング施策を推し進めたことなどを追い風に成長してきた。 公開価格は1株690円で、公開価格による時価総額は約85億7100万円(新株予約権を除く) 。 一方で、日本ではまだまだリスキリングが定着したとは言い難く、スクーの上場に関しても、2023年12月の資金調達時の株式発行価格833円に比べると、公開価格が下回るダウンラウンド上場となった。 日本は国際的に見ても「社外学習」をしていない人の割合が多く、国が進めたリスキリング支援もまだ十分な効果を挙げられていないのが現状だ。 「学ばない日本」で、オンライン学びサービスは、今後も成長し続けることができるのか。森社長にインタビューした。
ダウンラウンド上場「スタートラインでしかない」
「既存株主にはリターンが小さくなったのは事実だが、それはスタートラインでしかない。しっかり価値を積み上げていけば、正当にバリュエーション(企業価値の評価)されていく自信がある」 森氏がこう話すように、スクーは2025年までに売り上げを急進させる“強気”な業績予測を発表している。 スクーの2023年9月期の売上高は20億700万円で純損失は6億8000万円の赤字だ。 2024年9月期の業績予想では、売上高が41%増の28億4400万円、純利益は1400万円と黒字化に転じ、2025年9月期には売上高37%増の39億200万円、純利益5億300万円を見込んでいる。 ここまで“強気”の理由はどこにあるのか?
個人から法人へ、サービス急伸
スクーが成長可能性の根拠としているのが、法人向けニーズの拡大だ。 スクーはサービス開始当時、ビズリーチを創業した南壮一郎氏や、現在のLINEヤフー会長・川邊健太郎、CAMPFIREを創業した家入一真氏など、著名な起業家が講師として参加したことで注目を浴びた。 しかし、その後は「低迷期」を迎える。 「サブスクリプション収益を安定して積み上げることはできていたものの、いわゆるスタートアップの急成長と言われるような成長波形ではなかった」(森氏) そんなスクーにとって転機となったのが、新型コロナウイルスの流行に伴うオンラインでの学びの加速。そして、大企業を中心としたオンライン研修やリスキリングニーズの高まりだ。 「個人向け」サービスとしてスタートしたスクーだが、今や売上高の9割を法人からの売り上げが占める。 「個人顧客から法人顧客へ」、BtoBのSaaSとして収益モデルを変化させ、これまでの累計導入社数は4000社を突破した。2024年10月時点での法人契約数は2400社で、前年比20%を超える成長率だという。また会員の解約率も0.04%と低い。 すでに現在スクーを導入している企業でも、一部の社員・部署だけに部分的に導入しているケースも少なくない。そのため、同じ企業内で契約数を積み上げる余地があるという。 「新規獲得の企業も増やしていくが、すでに小口利用をしている大企業のアップセル(顧客単価の向上)を加速させることで、十分に達成できる業績予測だと考えている」(森氏) 一方で森氏は「今の日本というマーケットにおいては、企業が従業員の学びをサポートし、費用を負担していくということが最も美しい形。だが収益モデルは本質ではない」と話す。 「大事なのは個人が学び続ける社会を作ること。 ビジネスの根幹をずらすことなく、適切な対価をもらえることが重要。今は企業からSaaSのような形が一番適していると感じるが、ビジネモデルは今後も変更していくべきものだと思っている」(森氏)