「学びが続かない」という現実

2022年10月、岸田文雄元首相が、リスキリングに「5年間で1兆円の投資」を表明したことで、一躍注目を浴びたリスキリング市場。 だが、「リスキリング」サービスには課題も少なくない。 最も大きな課題の一つは、「企業は社員に何を学んでもらえばいいのか分からない」ということだろう。加えて、学ぶ側にも「学びが続かない」という課題がある。 リクルート・Indeed「グローバル転職実態調査2023」によると、「週に何時間、学びやリスキリングに取り組んでいますか？」という質問では、アメリカでは「週に3時間以上」と答えたのは52.8％と過半数を超えていたのに対し、日本ではたった24.7％だった。 一方で森氏は「先進国など他国と単純な比較することは、企業が置かれた状況もビジネスモデルも日本とは違っており意味がない。アメリカと同じだけ学んだら、アメリカのように成長できるのかと言えば違う」と指摘する。 「企業と協力して学び続ける人が増えて、生産性が上がり、雇用の流動性も高まる。日本の強みを発揮できているかが重要だ。10年前と比べたら、学びへの社会的な注目も変わったし、学ばないといけない、変わらないといけないと思い始めている。変わってきているという面では悲観はしていない」 具体的に「学び続ける」ための対策として、スクーが注力しているのが「集合学習」の仕組みだ。 JR九州では、社員を対象にした「企業内大学」でスクーを導入しており、月1回、同じテーマの講座を同じ時間で受講しているという。 チャット上で意見交換をしながらオンライン受講することで、受講者の意欲向上や社員の交流の活性化を目指しているという。 「何を学べばいいのか分からない」という課題に対しては、学びの全体像設計を伴走する体制を強化している。 「カスタマーサクセス（CS）らが、企業のリスキリング担当者と連携しながら、コンテンツだけでなく、コミュニティを作りを支援している。 何を学べばいいのか分からないのは共通の課題だが、職場で上司や同僚から勧められた本であれば読もうという気になるはず。『この講義も受けてみたほうがいいよ』と受講者同士がオススメし合うような、学びの文化を根付かせたい」 今回の上場で得た資金の使い道では、人材採用も目的な一つだ。 「コンテンツ制作や、ソフト面のアップデートに関わる人材はもちろん、企業との接点となるCS人材もさらに充実させていく」