人の手で?自然の力? 福岡・佐賀県境の海岸にある「包石」
一方で、地元の歴史や文化を研究する「糸島ば語る会」会長の吉丸克彦さん(82)は異なる見解を示す。 「どうやって持ち上げたのかは、分かりませんが」と前置きしたうえで、「私は人が作ったと考えています。自然にできたというのは不可解です」と話す。筑前国と肥前国とを分けた、現在の福岡・佐賀県境に位置することからも、「自然現象と捉えるのはちょっと難しい」と語る。
一帯には起伏のある崖が立ちはだかり、江戸時代、小倉から唐津まで続いた唐津街道で「下り」の最大の難所とも言われていた。崖の上から海を眺めると、波打ち際に包石。見晴らしがよい日には、その先に壱岐(長崎県)まで望めた。 あと少しで唐津にたどり着く――。「街道を行く人はきっと、包石のある光景を見下ろしながら一息ついたのでは」と吉丸さんは想像を膨らませる。この点については、糸島市の担当者もうなずき、なんだか少しほっとした。
雲の合間から差し込む太陽が、包石の上空で幾筋もの光の帯をつくり出す。やはり、謎は謎のままである方が面白い――と思った。
読売新聞