だって「ミサイルもったいない」 戦闘機の“機関砲不要論”くつがえるか 考えざるを得ない“コスパ”
相手の兵器に応じコスパで考える
そして再び機関砲を持たない戦闘機が誕生します。F-35は通常離着陸型のF-35Aだけが機関砲を固定武装として搭載しており、より重量制限に厳しい垂直離着陸機F-35Bや空母艦載機型F-35Cについては搭載されていません。F-35B/Cは必要な場合にのみ機外に機関砲ポッドを搭載します。 では、機関砲はまた不要な装備とみなされてしまうのでしょうか。その結論はまた先延ばしになりそうです。 2024年4月14日、イランはシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館領事部への爆撃への報復として、無人機とミサイルにより、イスラエルへ報復攻撃を実施しました。この攻撃は弾道ミサイル100発以上、巡航ミサイル30発以上、ドローン150発以上にも及ぶ大規模なものでしたが、イスラエル当局の発表によると99%が迎撃され、イスラエル領内到達前に無力化したとされます。 このうち大気圏外を飛翔する弾道ミサイルを除いた亜音速の巡航ミサイルや比較的低速のドローン迎撃については、イスラエル、アメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、サウジアラビアなどの空軍戦闘機が参加する大規模な防空戦闘が行われたとみられ、特にアメリカ空軍機によってその大多数が撃墜されたとみられます。 戦闘機による迎撃戦闘のほとんどはAIM-9「サイドワインダー」やAIM-120「アムラーム」のような空対空ミサイルによって達成されたとみられ、実際の戦闘の映像もいくつか公開されています。しかし少数ながら機関砲によって撃墜した事例もあったことが明らかになっています。 空対空ミサイルはAIM-9のような安いミサイルでも何千万円もする高価な装備です。巡航ミサイルは約1億円程度ですが、長距離自爆型ドローンは数百万円程度ですから、空対空ミサイルを使うには「もったいない」標的であるといえます。一方の機関砲は一度に50発程度を発射すると仮定すると、射撃単価は100万円程度で済みます。 回避機動をとらない相手には機関砲でも高い撃破率を維持できますから、機関砲は対巡航ミサイル・ドローンには「コスパが良い」武装であるといえ、戦闘機搭載機関砲の価値が今後、見直されることになるかもしれません。
関 賢太郎(航空軍事評論家)