どこまでも地域に根付く JA大阪東部代表理事組合長・戸野谷益之さん まちかど人間録
「大きい!」「まだやりたい!」。大阪府大東市の大阪東部農業協同組合(JA大阪東部)本店の一角で今月11日、3~5歳の保育園児約50人が、冬に自ら植え付けた種イモから育ったジャガイモを両手いっぱいに収穫した。農作物を育てる体験を通し、農業や食に関心を持ってもらいたい-と数年前から行うJAの地域貢献活動だ。 「地域のための、地域のJA」。正職員74人を率いる戸野谷益之代表理事組合長(66)=同市=のモットーだ。農家の農協離れが指摘される中、組合員の要望をきめ細かく把握しつつ、地域住民とのコミュニケーションも密に。JA職員のあるべき姿という。 昭和52年、生まれ育った地域に恩返しを、と南郷農協(平成元年の合併で大阪東部)に入組した。コメ集荷の手伝いや病害虫の防除…。何でもこなした。渉外担当時は地域をくまなく回り、土地の人と心を開いて向き合った。 「最近どうですか」「良い天気ですね」。他愛もないやり取りだが、「こわもてとのギャップもあってか、皆さんにかわいがってもらえた」と笑う。地域のつながりが希薄な現代だからこそ、地域に根差すJAが果たすべき責任は大きいという。 事業エリアは、都心に近い大東市と生駒山系が広がる里山地帯の大阪府四條畷市で、主力農産物はコメと野菜だ。 昨年8月、管内産の「ヒノヒカリ」を100%使った米粉うどんを新たに開発した。米粉にはグルテンが含まれておらず、小麦アレルギーの人でも安心して食べられる。 「コメの消費拡大はもちろん大事だが、アレルギーを持つ人にも、うどんのツルッとしたのど越しを味わってもらいたかった」。同11月に開いた主催の農業祭で一般販売したところ、食感を含めて「おいしい」と多くの人から好評を得た。 小麦価格の高騰や健康志向の高まりを受け、注目を集める米粉。基準の大きさに達していなかったり、精米過程で砕けたりして販売できない小米を原料に活用できれば、フードロスの削減につながる。米粉のラーメンやパスタの製作も検討中という。 今、力を入れているのが行政や警察との連携協定だ。昨年9月には、担当者が営業で使うミニバイクに搭載するドライブレコーダーの映像を管内の四條畷署に提供する協定を結んだ。「犯罪が起きたとき、1分1秒でも早く解決できれば。JAが地域を守る先頭に立つ覚悟」と力強い。