北朝鮮と接近するロシアの思惑と落とし穴 危なっかしい正恩氏の外交デビュー
目立つ北朝鮮の「離中近露」
2013年の核実験や張成沢の処刑をきっかけに中朝関係は悪化する一方で、北朝鮮の「離中近露(中国から離れてロシアに接近)」が、目立ちます。北朝鮮国内では、今年5月からロシアから電気が供給や小麦5万トンが支援されるという情報が流れ、ロシアと国境を接している羅先のビジネスマンは朝露関係の改善に大きな期待をかけています。 こうした流れを見ると5月のロシアの式典に金正恩氏が出席する可能性は非常に高いようにみえます。 ロシアと北朝鮮がロシア側からすれば、「引きこもり」に近い正恩氏を外交の場に引きずりだすことができれば、先述のように、東アジア国際政治で一定の評価を得ることができます。先に述べたウクライナ問題やルーブル下落で、凋落著しい自国の権威を挽回するチャンスでもあります。 また、北朝鮮にとっては、ロシアから新たな支援を得られるという点では魅力的です。北朝鮮の公式メディアである労働新聞は、このところしきりにウクライナ問題におけるロシアの姿勢を擁護する主張が掲載されています。
正恩氏は本当に訪ロするのか?
一見、蜜月関係を築きつつあるロシアと北朝鮮ですが、危険な落とし穴があることも見逃せません。まず、金正恩氏が本当にロシアを訪問するのかという疑問があります。 報道各社は既成事実のように報じていますが、ロシア側からも「金正恩氏が参加する」とは明確に述べられていません。北朝鮮外交では、金永南氏が「外交上の国家元首」として外国を訪問したり要人と会談することも多く、今回も「北朝鮮の首脳部」として金永南氏、または別の人物が訪露する可能性もあります。 また、外交経験がまったくない金正恩氏が、いきなり各国の国家元首と同席するのは非常に危なっかしいものがあります。全ての式典がそうですが、参加者の序列や立ち位置などは、主賓との関係の強さを物語ります。金正恩氏が、どこに座り、写真ではどこに立つのか……。端に追いやられるようでしたら、北朝鮮としても出席する意味がありません。