【ライトノベル最新動向】宇宙冒険ものや魔法もの、悪役貴族ものとバラエティに富んだ新作が続々
新作に面白そうな作品がならんだ2024年12月のライトノベル。第9回カクヨムWeb小説コンテストエンタメ総合部門で大賞となった榮織タスク『銀河放浪ふたり旅 ep.1 宇宙監獄の元囚人と看守、滅亡した地球を離れ星の彼方を目指します』(電撃文庫)は宗教団体の教祖候補として育てられたカイト・クラウチが、捕まって宇宙空間にある監獄で服役していたら地球が滅亡の危機に瀕してしまう。 【画像】「涼宮ハルヒ」シリーズの4年ぶりの新刊 監獄にいても食料や空気が途絶え死んでしまうため、地球に戻るしか道はなかったが、カイトはどうせ死ぬなら遠くへ行こうとして太陽系の外へと向かい、そこで人類が未だ出会うことのなかった知的生命体に助けられる。バラエティに富んだ宇宙人たちとの出会いがあり、球体だった看守ロボットが改造されて少女の形になってカイトと共に行動する展開もあってと、楽しく読める宇宙冒険小説だ。12月10日発売。 第20回目のMF文庫Jライトノベル新人賞で最優秀賞を獲得した芥辛子『エンバーミング・マジック 魔法を殺す魔法』(MF文庫J)。目の前で女の子が車にはねられたのを見た主人公が禁忌の魔法を使って女の子を助けたものの、同時に家入ナギを猫にしてしまった。そのままでは魔物になってしまうナギを消さないで済むようにするために、ナギに魔法を覚えさせるがうまくいかないままタイムリミットが迫る。謎めいた主人公の過去も気になるミステリアスファンタジーだ。12月25日発売。 『モブだけど最強を目指します! ~ゲーム世界に転生した俺は自由に強さを追い求める~』の反面教師も新シリーズ『最強の悪役が往く ~実力至上主義の一族に転生した俺は、世界最強の剣士へと至る~』(電撃文庫)を刊行。VRMMORPGの世界に転生して悪役公爵家の一員になった主人公だが、転生した人物はゲームではただのモブ。そこからストーリーに介入し、主人公になっていくために企みを巡らせる。ゲーム世界への転生が得意な作者ならではの面白さが詰まっていそう。12月10日発売。 八又ナガト『ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた~なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!~』(GA文庫)タイトル通りにモブ転生からの成り上がりストーリー。ラスボスにとって変わって悪逆非道な振る舞いを繰り広げようとしたものの、なぜか暴君ではなく名君と慕われていく勘違いストーリーを楽しめそう。12月15日発売。続々と作品が登場してくる“悪役貴族もの”はどこまでブームを作るか? 『バスタブで暮らす』で社会に適応できなくなった女性のヒリヒリとした日々を描いた四季大雅だが、新刊『クラスで浮いてる宇良々川さん』(ガガガ文庫)は物理法則に逆らって浮いているクラスメートの少女と、物理学を信奉する少年が鳥人間コンテストを目指すという不思議さにあふれた青春ストーリーになっている。作風が変わったのか、それとも読めば感じられる切なさがあるのか。12月18日発売。 暁刀魚『隣の席の王女様、俺の前だけ甘々カノジョ』(ファンタジア文庫)は魔導学園に特待生として入った主人公の少年が、正体を隠して学園に通う王女様と仲良くなるという羨ましい展開から、平民出身者として虐められる少年が特待生としての本気を見せて貴族の子弟を圧倒する逆転劇へと進んで楽しませてくれる。12月20日発売。 単行本・ノベルズでは『魔物使いの娘~緑の瞳の少女~』(DREノベルス)がイラストレーターに『りゅうおうのおしごと!』や『86-エイティシックス-』の装画を手がけたしらびを迎えていて注目。魔王が生み出した魔物たちを従えたという魔女リングリーンの末裔・リーンも同じような力の持ち主。そのリーンに命を救われた冒険者のクハラは、魔女狩りの異名と取っていたにも関わらず、リーンと一緒に旅に出る。相容れないはずの魔女と冒険者の関係がどう進むかが気になる。12月10日発売。 シリーズでは、テレビアニメの第5期が放送中の大森藤ノによるシリーズ最新作『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか20』(GA文庫)が12月15日に発売。学生たちを載せた「学区」がダンジョンのある街オラリオに来たことで都市競技祭典が開かれることになるという展開。オラリオの英雄ながら、前巻で学区の生徒たちといっしょにダンジョンを冒険したベルの立場が気になる。作者の大森が描き下ろした短編が収録された小冊子が付く特装版も同時刊行。 佐島勤による人気シリーズの最新巻『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー9」(電撃文庫)は12月10日に発売。遺跡に眠る古い魔法を集めている司波達也に対し、彼が発掘した富士山麓の遺跡を自分たちの縄張りだと考えていた勢力が怒り、達也や彼が所属する四葉家の粛清計画を推進。四葉の分家にあって達也を憎む黒羽貢も不穏な動きを見せる中で、魔法師たちの激突が日本を舞台に繰り広げられそうだ。 2025年1月からテレビアニメの第2期が始まる珪素のシリーズ最新巻『異修羅X 殉教徒孤行』(電撃の新文芸)は12月17日発売。エレアの死を知り暴走を始めた世界詞のキアを討伐する作戦が始まり、通り禍のクゼ、窮知の箱のメステルエクシル、魔法のツー、不言のウハクらが行動する。他にも壮絶な戦いが相次ぐ全員が勇者によるバトルファンタジーとなっている。 キャラクター小説系の人気シリーズでは道草家守『龍に恋う 七 贄の乙女の幸福な身の上』(富士見L文庫)が12月13日に登場。父親と向き合うために故郷を探す旅に出た銀市と珠の前に、銀市が自らを掛け軸の中に封じ込めようとした騒動の原因となったアダムが現れる。「半妖編」がどのように完結するかを見極めよう。 同じ和風シンデレラストーリーとしては、碧水雪乃『龍の贄嫁〈上〉』(メディアワークス文庫)も12月25日に登場。名家に生まれたものの“無能な名無し”と虐げられて育った鈴だったが、【巫女選定の儀】でなぜ氷の貴公子と名高い〈青龍〉に自身の巫女として選ばれる。2人がどのような波乱を乗り越え結ばれていくかを見守ろう。
タニグチリウイチ