いいのわたるの「北米縦断記」 600km走ったアラスカで出会ったものは?
2023年6月から「走って世界五大陸縦断」に挑戦しているいいのわたるさん(44歳)が第1ステージである北アメリカ大陸1万4000kmを完走。その様子をレポートしてくれました。ランナーズ2024年7月号に掲載した記事全文を転載します。
ブエノスディアス! 五大陸縦断中のいいのわたるです。アラスカの北限をスタートして10カ月で1万4000km走り、中米最後の国パナマに到着しました。 え?なんでそんなことやってるの? そもそもあなたダレ? となっている方もいるかもしれません。まずは僕は何者なのか、そしてなぜこの挑戦をして、今どんな経験をしているのかを伝えさせてください。この生き方はもう一人の貴方の人生だったかもしれないという目線で読んでいただけるとうれしいです。 というのも、社会人15年目までは一般的なサラリーマンとして生きてきました。子ども時代から陸上部で鍛えてきたというわけでもありません。社会人になり、ダイエット目的で走り始めたのがキッカケです。 走り続けているうちにモチベーションの維持としていろいろなマラソン大会に出場していろいろな人たちに出会い、マラソンより長い距離、そして『過酷』なレースを知って走ることになりました。トレイル500kmをはじめ、砂漠を250km、標高5500mのブータン300km、地面で目玉焼きができるほどのデスバレー220km。いずれも規格外なレースばかり。ただ、自然と向き合い、順応することで人間としての強さの不思議に喜びを感じることができます。あ、こんな環境でも生き抜けるんだ! と。 優勝も重ねていき、とある海外レースを走り終えた時に友人から「そんなに速くて強いならココ(ドイツ)から日本まで走って帰れるんじゃない?」と冗談半分で言われ「地球を走るってどんな世界なんだろう?」と妄想が膨らみました。しかし、現実に落とし込むには社会人としては難しく、一度は夢想として終わりました。その後、インド駐在や走ることを通じて知り合った方々との出会いがあり、将来を見つめ直した時、自分にしかできない人生を進もうとグッとこぶしを握り締めました。