センバツ2024 創志学園を支える力/上 野球部長 大長秀行さん(36) /岡山
◇選手の自主性を大事に 選手を集めて指示を出し、ブルペンで投げ込む投手陣を見守っていたかと思えば、門馬敬治監督と話し込んだり、報道陣や来客の対応に追われたり……。2010年春の創部時からコーチを務め、22年夏に肩書は「部長」になったものの、コーチの役割は変わらず、練習中はグラウンドをせわしなく動き回る。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 神戸市出身。03年に野球部を創部したばかりの神村学園(鹿児島)に入学し、同校初代監督で、後に創志学園の初代監督も務めた長沢宏行さん(70)の下、プロ野球の西武や巨人で活躍した野上亮磨さん(現巨人3軍投手コーチ)らとプレーした。 入学初日から主将を務め、3年間チームをまとめた。練習前には1人50個ずつ石を拾い、保護者と一緒に杭を打って外野にフェンスを立てるなど1期生ならではの経験も。主将として特に重視したのは、チーム内で積極的に話をすること。頻繁にミーティングを開き、監督とも意見を交換した。「監督の考えをどれだけチームに浸透させるかを考えて動いていた」。監督と選手のパイプ役に徹し、05年のセンバツ準優勝を支えた。 卒業後は天理大に進学。4年の時、創志学園に野球部を作って監督を務めることになった長沢さんから声を掛けられてコーチに。再び恩師と部を基礎から築いた。当初は若かったこともあり、「主将のようにチームの中に入って、言いたいことを言っていた」と振り返る。 だが教員として担任を務めるようになり、指導者としての接し方が見えてきた。「コーチが言うと選手は言い返せず、指示待ちになってしまう。選手が自主的に動けるように導くのが大事だと思う」 22年夏に長沢さんが退任し、東海大相模(神奈川)を率いて春夏合わせて4度の全国制覇を成し遂げた門馬監督が就任。不安もあったが、門馬監督に「一緒にチームを進化させよう」と言われて腹が据わった。練習メニューなどが変わる中で、「上司が代わればやり方が変わるのは当然のこと。最初の1年は選手が戸惑い、焦って空回りする部分もあったが、『分かるまでやろう』とついてきた」。門馬監督が目指す野球が浸透し始め、昨秋の中国大会で準優勝。7年ぶりのセンバツへの切符をつかみ取った。 監督が代わって初めて臨む甲子園。チームの目標は「日本一」だが、「長沢先生の教え子であるOBたちに、『創志を応援しよう』と思ってもらいたい。恩師への思いを超えた母校愛を持ってもらえれば、創志の歴史がつながっていくと思う」。部長として、コーチとして。甲子園で「進化」を示せるよう、チームを支える覚悟だ。【平本泰章】 ◇ 18日に開幕する第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する創志学園(岡山市北区)。10年春の創部時から支える2人を紹介する。