樋口恵子 77歳の時に大手術を受け、リハビリでかけられた言葉に思わず涙が…ずいぶん反対もあるなか「介護保険を作れ!」と最後まで旗を振り続けて本当によかった
◆どの世代でも安心して生きていける社会を さて、大動脈瘤の手術の際の笑える話をひとつ。 手術費、治療費、入院費を合計すると、ゆうに300万円を超える金額に。請求書を見て、「ぎゃっ、300万もとられるの!?」と、肝を冷やしました。実際は、高額療養費制度のおかげで、高額療養費のうち自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。ですから私の場合は、確か15万円ほどの支払いですみました。 ところが私ときたら、15万円強の負担額を見て、付き添ってくれた人の腕をむぎゅっとみ、小声で「きっと病院の計算違いよ。早く払っちゃって逃げよう!」。もちろん冗談でしたが、本当におっちょこちょいです。 そのうち我に返り、高額療養費制度が適用されていることに気づき、本当に涙が溢れました。私たち日本国民は力を合わせて、高齢者が安心して医療を受けられる制度を作り上げてきたのだ。そういう国にしたのだと、感涙を抑えることができなかったのです。 今、その財源が厳しいと言われています。でも人生100年時代、高齢になっても、どの世代でも安心して生きていける社会を、私たちはこの先も守っていかなくてはならない。残りわずかな人生ですが、生きている限り、そのためにできることを少しでも果たしたい。 それが、91歳の私の偽らざる気持ちです。 (構成=篠藤ゆり)
樋口恵子
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