チョン・ジョンソからパク・ウンビンまで!この秋、配信で見逃せない新作韓国映画&ドラマをご紹介
10月に開催された第28回釜山国際映画祭のメインイベントの1つ、アジアの優れたコンテンツを表彰する賞「アジア・コンテンツ・アワード(ACA)」の主役は、ディズニー+で配信中のドラマ「ムービング」だった。リュ・スンリョンの最優秀主演男優賞をはじめ、作品賞、最優秀作家賞、最優秀新人女優賞(コ・ユンジョン)、最優秀新人俳優賞(イ・ジョンハ)、最優秀視覚効果賞と6冠もの栄誉に輝いた。世界の映画祭では過去にOTT作品の出品が禁止されるなど軋轢も起きていたが、韓国において配信作品はK-Cultureのプライドを誇るコンテンツとして存在感を示している。 【写真を見る】「ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え」や「身代金」(日本未配信)でも華麗なアクションを披露したチョン・ジョンソ 栄光を獲得した獲得の波に乗り再ブームの機運も高まる「ムービング」を再鑑賞したい気持ちもあるが、今秋の新作韓国ドラマと映画はまたまた粒ぞろいだ。今日はNetflix、Disney+、U-NEXT、Prime Videoといった主要配信サービスから、秋の夜長に観たい珠玉の作品たちをご紹介しよう。 ■チョン・ジョンソ扮するダークヒロインの壮絶な復讐劇が胸に迫る!Netflixオリジナル映画『バレリーナ』 今夏人気を集めたNetflixドラマ「マスクガール」は、これまで男性キャラクターの活躍が目立っていたノワール劇のメインに女性を据え、より激しいドラマに仕立てた新鮮な作品だった。そんなダークヒロインの新時代に続くのが、10月6日より配信中のNetflix映画『バレリーナ』(23)だ。 元要人警護員のオクジュ(チョン・ジョンソ)は、かつての同級生でバレリーナのミニ(パク・ユリム)と再会し、かけがえのない友人となる。ところが、ミニは突然自ら命を絶ってしまう。彼女を追い詰めたのは、おぞましい性癖の男チョイ(キム・ジフン)だった。ミニの遺言「復讐して」を胸に復讐の炎を燃やすオクジュだったが、彼の背後にいる邪悪な組織の存在を知ることになる。 多勢を相手に銃を携えての戦闘やエレベーターでの格闘など、これまで多くの韓国ノワールや復讐劇で見られたシーンにもかかわらず、『バレリーナ』はより鮮烈に映る。オクジュの立ち回りは、文字通りバレエを思わせるほど優雅だ。その美しさはただの見栄えの良さの追求ではなく、前途のある麗しいバレリーナだったミニや、良心の呵責を微塵も感じない男性たちに傷つけられた女性の生命の美しさを背負うようで、痛切だ。チョン・ジョンソは新作映画『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』(22)でも作品を象徴するモナ・リザを演じていて、こちらもどのような女性キャラクターを演じてくれているか楽しみだ。 ■元 K-POPアイドルと1つ屋根の下!?王道ラブストーリーながらペ・スジの演技も深い「イ・ドゥナ!」 ラブストーリー、ホラー、サスペンスなど、ストーリーのスタイルが王道であっても、現実と密接になることにより語られるテーマがより切実に感じられることがある。10月20日より配信中のNetflixシリーズ「イ・ドゥナ!」もまたそうしたドラマだ。 ウォンジュン(ヤン・セジョン)は、進学のため実家から大学近くのシェアハウスに引っ越してきた平凡な青年。そこで知り合ったのが、人気K-POPガールズグループ・ドリーム・スイートの元メインボーカル、イ・ドゥナ(ペ・スジ)だった。人気絶頂の中突然引退し、大学へ復帰していた彼女になぜか気に入られたウォンジュンは、振り回されながらも次第に惹かれていく。 一世を風靡した元アイドルのドゥナと平凡な学生ウォンジュン、運命が交わらないはずの2人が1つ屋根の下で暮らすことで展開するドキドキの下宿ライフ。ドゥナのコケティッシュな目線やしぐさはヨジャドル(K-POPの女性アイドル)が見せる愛嬌そのもので、久々にアイドルらしく振舞うキュートなペ・スジが見られるのも嬉しい。その一方で、人気絶頂の中でドゥナがどのように心を壊していくかもつぶさに描写される。現実に、K-POPアイドルの彼らや彼女たちがどれほど人生を削り活動をしているか、プレッシャーに苛まれているか、すさまじい数の悪質なアンチに晒されているか、ファンは痛いほど知る事実だ。ペ・スジもまた、アイドルグループmiss A時代に納得のいかない思いや理不尽さを感じることがあっただろうと思う。ペ・スジが明るさと悲壮な表情の両方を見せてキャラクターに奥深さを加えたことで、ドラマも一味違うものになっている。 ■サスペンスでありながらヒューマンドラマの奥行きもあるユン・ゲサン主演のドラマ「誘拐の日」 高く評価されたペ・スジ主演のドラマ「アンナ」のように、隠れた佳品の揃うAmazon Prime Video。同名小説を原作にした「誘拐の日」もまた隠れた名作だ。9月13日より配信されている。 気弱な男ミョンジュン(ユン・ゲサン)は、白血病を患う娘の手術費用を工面するため、元妻ヘウン(キム・シンロク)に言われるまま裕福な家庭の子供を誘拐する。ところが拉致した少女ロヒ(ユナ)の両親は、いくら待っても娘を探す気配がない。そのうえ、頭脳明晰で口が達者なロヒに手を焼く始末だ。ミョンジュンがロヒの自宅をこっそり見に行くと、何と両親が殺害されていた。 不器用すぎる誘拐犯ミョンジュンを演じるのはユン・ゲサン。『犯罪都市』(17)で演じたギャングの強面ボスキャラが記憶に新しいが、穏やかでちょっとドジという親しみやすいキャラクターも上手い。型にはまらない演技が監督に気に入られ、500人以上の候補者から抜擢されたロヒ役のユナとの掛け合いが絶妙だ。自身も記憶を失ったまま、ミョンジュンを相棒に両親の謎の死を解き明かすため奔走していく展開はスリリングでありながら、その奥に秘められた人間のやるせなさと暖かさにも胸を掴まれる。 ■犬嫌いの容姿端麗な教師をチャウヌが好演!ウェブトゥーン原作のドラマ「ワンダフルデイズ」 「ムービング」が韓国の人気作家カンプルの同名作品の実写化で大当たりしたように、韓国では人気ウェブトゥーンを原作にしたドラマが変わらずトレンドとなっている。10月11日よりU-NEXTで配信中の「ワンダフルデイズ」は、同名のウェブトゥーンをもとに「女神降臨」や『デシベル』(22)など精力的に俳優業をこなすK-POPグループASTROのチャ・ウヌと、「セレブリティ」で人気を博したパク・ギュヨンを主演に迎えたラブコメディだ。 高校教師のヘナ(パク・ギュヨン)は、異性とキスすると犬に変身してしまう呪われた家系のせいでまともな恋愛ができない。職場の気になる同僚ボギョム先生(イ・ヒョヌ)に思いを伝えようにも、呪いのせいで積極的になれないままだ。ある日、ヘナは酔った拍子に天敵の数学教師ソウォン(チャ・ウヌ)にキスしてしまう。犬に変わる時間は、夜中から明け方まで。そして100日以内に犬の姿のまま同じ異性とキスしなければ、一生人間に戻ることができなくなってしまうのだ。何とかソウォンに接近しようとするヘナだったが、彼が実は大の犬嫌いだと知ってピンチに陥る。 「普段応援している俳優やアイドルがいたとしても、チャ・ウヌはまた別」を意味する「최애는 최애고 차은우는 차은우다(推しは推し、ウヌはウヌ)」という造語が考案されるほど美しいチャ・ウヌを見ているだけでももちろん楽しいし、毎回登場する犬たちの愛くるしさもたまらない。また、“100”という区切りを大切にする韓国人にとって、「出会いから100日」「付き合って100日」などカップルの100日記念はとても重要だ。犬猿の仲なヘナとソウォンが、晴れて100日目にロマンティックな記念日を迎えられる二人になるのかが見どころだ。 ■トラウマを抱えたダークヒーローの活躍を描く「ヴィジランテ」 先に行われた釜山国際映画祭のトークイベントも盛り上がった「ヴィジランテ」も、まもなく11月8日よりDisney+にて配信スタートとなる。こちらもCRG、キム・ギュサム原作のウェブトゥーンがベースとなっている。 警察学校の優等生ジヨン(ナム・ジュヒョク)は、子供の頃に目の前で母親が殴り殺され心に癒えない傷を抱えている。のちに犯人の男は釈放されるが、ジヨンは彼が再び誰かを襲うのを発見し、自ら復讐を遂げる。こうして再犯を繰り返す極悪人にひそかに鉄槌を下していくジヨンは次第にメディアや警察の注目を集め、人々は“ヴィジランテ”(自警団)と呼ぶようになっていく。 ナム・ジュヒョクが兵役前最後に挑んだキャラクターは、正義感のある警察官を目指しながら強い復讐心を抱き私刑に手を染めるダークヒーロー。「二十五、二十一」の爽やかな演技で多くの視聴者を虜にした彼が一転、光と影を持つキャラクターをどう演じているかが鑑賞ポイントだ。釜山国際映画祭でのトークイベントによれば、「ヴィジランテ」は後半に向かうにつれてストーリーもキャラクターもオリジナルとドラマの違いが明確になっていくという。リベンジドラマの行き着く先がどんな結末になるのか、最後まで見逃せない。 ■パク・ウンビンが無人島生活!?「無人島のディーバ」は旋風を巻き起こす期待大 そして最後に、10月28日にNetflixにて配信が始まったばかりの「無人島のディーバ」をご紹介したい。 のどかなチュンサム島に暮らすモクハ(イ・レ)は、同じく島出身アーティストのランジュ(キム・ヒョジン)に夢中な高校生。いつかソウルで歌手になることを夢見ている。16歳のある日、オーディションを受けるために船で家出を敢行するが、不慮の事故で海へ落下。命からがら無人島に流れ着いたのだった。それから15年後、ひょんなことから発見されたモクハ(パク・ウンビン)は、一度は失った歌手の夢に向かって奮闘していく。 無人島で15年間サバイバル生活をしていた女性が主人公という奇抜さ、扮するのは天真爛漫なパク・ウンビンと聞き軽妙なコメディを想像していたが、第一話で描かれる壮絶な現実に良い意味で予想を裏切られて見入ってしまった。生まれ育った島を離れたいというモクハの思いは、ただハイティーンらしい夢というだけでなく、生存にまつわるより切実なものだった。モクハの少女時代をイ・レが演じているが、パク・ウンビンと輪郭が驚くほどそっくりで、成長した姿に違和感がないのもドラマへの没入度を高めている。このドラマで、またもやパク・ウンビンがシンドロームを巻き起こす予感がする。 どれもこれも期待大な作品ばかりで、韓国ドラマファンには嬉しい悩みが尽きない。この秋もぜひ、お気に入りの作品をみつけていただきたい。 文/荒井 南