【甲子園熱戦レポート│2日目】「交代させようと思う場面がなかった」名将・西谷監督も唸った2年生右腕の快投が示す大阪桐蔭の「分厚い投手力」<SLUGGER>
「吉田が1打席目をしっかり振りにいってくれたのは大きかったですね。ストライクゾーンに来たら全部振りにいけと言っていたんですけど、ストレートや変化球にも対応ができたので、向こうとしたら嫌だったと思います。0対0で5回に行くのがこっちとしては嫌な展開だったんで、いい形で3点が取れました。2点取ってから宮本が初球を仕留めたのも大きかった」 橋本翔太郎コーチがそう振り返ったように、鮮やかな先制パンチで試合の主導権を一気に引き寄せた。守りでリズムを作って最初の好機をモノにしていく。4回にも2点を加点して、試合の大勢を決めた。 5点をリードしてからの中野は相手を見ながらの投球だった。西谷監督は「5回を投げれくれたら」というイメージで他の投手陣も用意させていたが、危なげないピッチングで散発の4安打。「交代させようと思う場面がなかった」というほどの安定ぶりで興南を封じてみせたのである 「リズムがいいところ、バランス良く投げれるところ、打たせて取れるので、守備のリズムを取れるところだと思います。でも、1番は気持ちの強さかなと思います」 大事な難しい初戦を任された中野は指揮官の意図をそう汲み取ったという。起用する側の監督、起用される側の選手の思いが合致し、好投は見事に引き出されたというわけである。 捕手の増田湧太は言う。 「後ろにいても安心ですし、先発でも投げれますし、どこで起用されてもしっかり投げきれる投手なんだと思います。今日は状態も良かったし、ストライクゾーンで勝負できるピッチャーやと思うので、そこを汲み取って試合に臨みました。中野の対応力はチームの武器になると思います」 投手陣の安定剤のような存在。中野がいて、他のポテンシャルの高い投手たちが際立つ。今年の大阪桐蔭の投手陣はまた一段とレベルが高そうだ。 取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト) 【著者プロフィール】 うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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