ビザ・キャッシュアップRB、発表された新車は昨年終盤戦仕様と共通点多し。正常進化か、それとも序盤戦に大幅アップデートか?
ビザ・キャッシュアップRBは、チーム名称を新たにして初めてのF1マシン『VCARB 01』を発表した。彼らはかつてのトロロッソ、アルファタウリ時代のようなジュニアドライバーの育成の場という立ち位置から脱却し、姉妹チームであるレッドブルと技術面も含めて緊密な関係を築くことを公言している。 【ギャラリー】ビザ・キャッシュアップRBの2024年マシンVCARB 01 VCARB 01には、直近のF1で圧倒的な強さを誇ったレッドブルのマシン『RB18』や『RB19』のアイデアが散りばめられているが、そこにチーム独自のDNAが組み合わさったマシンとなっている。つまり、レッドブルの完全なコピーマシンになっているわけではないのだ。 レッドブルを源流に持つデザインでまず目を引くのが、メカニカル系のパーツ。フロントサスペンションはプルロッドに変更されたが、これはレッドブルが新レギュレーション元年の2022年から取り入れたものだ。これに追随したマクラーレンも躍進を遂げており、今季のニューマシンではステーク(ザウバー)もC44でプルロッドを採用した。 そして現行のグラウンドエフェクトカーにおいて、最も重要なエリアとも言えるのがサイドポンツーン。チームもこのエリアに大きな変更を施した。VCARB 01では、インレットがレッドブルに似た形状となっている。この形状は、ほとんどのチームが追随していきそうだ。 ただそのインレットも、2023年のレッドブルRB19というよりは、2022年のレッドブルRB18に近い印象を受ける。というのもレッドブルは2023年シーズンを通してサイドポンツーンを正常進化させ、インレットのボディワークをより幅広に、そして吸気口を狭くすることで、アンダーカット(サイドポッド下部のえぐり込み)をより極端にしたのだ。 ほぼ未塗装の黒となっているサイドポッド下部は、インレット部分に近い前方部分が深くえぐり込まれており、ラジエターなどの冷却系、電気系統の部品があるところから急に膨らんでいる。一方の上部は車体後方に向けてキツい“下り坂”となっており、外側には手すりのような段差が設けられ、滑り台のような形状をしている。これにより、ここを流れた空気をコークボトル状になった車体後部に流そうとしている。 棚のような段差がついたエンジンカバーの形状は、多くのチームと共通している。これも2023年版から引き継がれており、冷却に厳しいサーキットではこの膨らんだ部分に魚のエラのようなギザギザの開口部を設けることだろう。 昨シーズンに導入された長方形のエアボックスに関しても、今年FIAによって導入された改訂版のテストに合格するため再設計が必要となったものの、基本的には同じ形状のものが採用されている。 インレット以外のサイドポンツーンの形状は、昨季終盤のものとほぼ同じだ。ボディワークの上面、下面がはっきりと分かれており、それぞれの気流が最大限マシンのリヤへと向かうように工夫されている。 リヤウイングに関しては、発表されたものを見る限りはシンプルなスプーン型となっている。中央にある1本のピラーで支えられているのも昨年と同じだ。アッパーフラップの先端が露出したデザインも継続採用されている。 またエンドプレートに関しては、外側に膨らみ(スウェッジライン)が設けられているが、こちらも昨年使われていたデザインとなっている。 その他フロントウイングやフロアエッジも、2023年終盤モデルと共通しているように思われる。したがって、今回明らかにされたVCARB 01が2024年シーズン開幕モデルの最終形である可能性は低いだろう。上記のエリアは、チームが2024年に向けて取り組んだ設計領域であると予想されているのだ。開幕前テストはもちろんのこと、開幕数レースで断続的なアップデートが行なわれる可能性もある。
Matt Somerfield