子の「一番」を褒めるとやる気をなくしかねない訳 比較の褒め方は比較対象が変わると容易に結果が変わる
・負けそうな相手とは勝負しなくなる ・負けてしまった場合、母親に隠すようになる このように、本来はかけっこが大好きだったはずの息子の「好き」も奪ってしまうことになり、「母親の期待に応えたいから頑張る」といった本来の目的とは異なったものに変化してしまうのです。 「自分で考える力」を育むために大切なことは、子ども自身が「自分がどうしたいのか」を考えられること。すべてのベースはここにあります。 「ママが喜ぶから」、これももちろん立派なモチベーションにはなるのですが、一時的もしくは短期的な動機づけになる可能性が高く、「自分で考える力を育む」という点には合致しないのです。
自分で見つけた好きの気持ちや、自発的にやりたいと感じていたことが、母親からの愛の込もった何気ない一言で消されてしまうとしたら、こんなに残念なことはないと思いませんか? これまでの研究から、①能力や結果を褒めること、②他者との比較で褒めることはおすすめできないことがわかってきています。 有名なものとしては、スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授の研究があります。この実験では思春期の子ども数百人を対象に、難しい問題10問を解かせます。その後、子どもたちを、①能力を褒められたグループ、②努力を褒められたグループの2つに分けます。
次に、それぞれのグループの子どもたちに、先ほどやった問題よりも難しいテストと簡単なテストの2種類の選択肢を与え、どちらか好きな方を選ぶように指示を出します。ここで、興味深い違いが出るのです。 ■「1番」を褒めてもやる気は出ない 能力を褒められたグループでは、70%近くが簡単な問題を選びました。一方、努力を褒められたグループでは、90%が難しい問題にチャレンジする方を選んだのです。能力を褒められたグループでは評価を気にしてしまうため、簡単な問題を解いて自分の能力が高いことを示そうとします。努力を褒められたグループでは努力を示せる方、チャレンジを恐れない心意気を示せる方に興味がいくようになるのです。