鈴木宣弘×森永卓郎 我慢して都心に住む時代が終わり、労働者になる以外に稼ぐ手段がないと危険に…森永「暮らしを維持したいなら働く時間をより増やさなければならなくなる」
◆「トカイナカ」の魅力 森永 この前、猛暑で爆発したスイカを見ると、クワガタが食らいついていたのでびっくりしました。「カブトムシやクワガタにスイカを与えてはいけません」ってよく言われますが、カブトムシも食らいついてましたよ。 鈴木 自分の畑でカブトムシやクワガタが見られるなんて楽しいことですよね。ワクワクしますよね。 森永 うちは「トカイナカ」なので、子どもたちが小さいころから、カブトムシはいくらでも捕えられました。 でも、子どもを東京のデパートに連れていって、昆虫売り場を見に行ったことがあって。 「あのクワガタを買ってほしい」と言うので、「近所でいくらでも捕れるじゃねえかよ」って言った。 そしたら「お父さん、これ、所沢のと色が違う」と。子どもたちはこんなことが楽しいんです。 鈴木 親もそうだけど、子どもにとっても幸せな世界ですよね。 目の前に畑があり、田んぼもある。クワガタだ、メダカだ、ザリガニだと、いろんな生き物がいてね。それだけでも郊外に住みたいなって思いますよね。
◆現代人は農業と隔離された生活を送っている 森永 この間、ニッポン放送のアナウンサーが取材に来たんです。それでうちの畑を見せて「何の野菜かわかる?」と聞いてみたら、もうびっくりするほどわからなかった。ニンジンもアスパラもわからない。 わかった野菜は一つもないんじゃないかな。たとえばイチゴなんかだったら、実を見ればわかるけど、葉っぱだけ見ても何なのかわからないんです。それぐらい、多くの人が農業と隔離された暮らしを送っていますね。 鈴木 食べ物がどうやって作られているのか、農家さんがどういう仕事をしているのか、そういうこともわからなくなっていますよね。 森永 農業体験だけでもいいから、一人ひとりが農業をやってみる必要があるかもしれない。 鈴木 それを仕組みとして実現する必要があるかもしれませんね。 ビル・ゲイツ氏がやろうとしている「デジタル農業」とか、一部の人だけが儲かる仕組みにばかり予算を使っていないで、そういうことにもお金を使ったほうがいい。 すべての人が農業に関わりを持って、楽しく暮らせるような社会になれば、多くの問題が解決すると思う。 地域での連携もあって、生きがいもある。子どもたちも自然にも触れて健やかに育つ。子どもの情操教育的な面でもメリットが非常に大きい。 ※本稿は、『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(講談社)の一部を再編集したものです。
鈴木宣弘,森永卓郎