競輪元トップ選手次男の市田龍生都さん「偉大な父を超える」 福井県出身の逸材、養成所を早期卒業見込み
競輪G1制覇など通算451勝を挙げた元トップ選手の市田佳寿浩(かずひろ)さん(49)の次男、龍生都(りゅうと)さん(23)=福井県坂井市出身=がプロを目指し、今年5月から静岡県の日本競輪選手養成所で訓練を積んでいる。教官らに「10年に一人の逸材」と評される成績優秀者で、同期72人でただ一人、規定より3カ月早い12月の卒業が見込まれる。順当ならプロデビューは来年1月。龍生都さんは「最大の目標は偉大な父を超えること」と夢を描く。 龍生都さんの強みは瞬発的な加速に加え、トップスピードを維持できる持久力だ。養成所での6、9月の記録会ではその才能をいかんなく発揮した。スピード、持久力ともに優れる候補生に与えられる「ゴールデンキャップ」を2連続で獲得。さらに1000メートルの基準タイムを同期で唯一クリアし、早期卒業候補生に選ばれた。 科学技術高(福井市)時代から全国高校総体や国体など全国を舞台に活躍した。高校卒業と同時に養成所に入る選択肢もあった。しかし、当時現役選手だった佳寿浩さんから「覚悟」を問われた。 度重なるけがに見舞われながら、不屈の闘志で復活を遂げ「不死鳥」の異名を持つ佳寿浩さん。「プロで成功できるのか」「落車の危険もある」-。尊敬する父から投げかけられた言葉は重かった。「当時の僕には覚悟がなかった」。龍生都さんは振り返る。 タイムを競う自転車競技をさらに極めるため、中央大に進学し、フィジカル強化に励んだ。さらにスピードに磨きがかかり、大学生では“無双状態”。全日本選手権でも1キロタイムトライアル(TT)2連覇を達成するなど、国内トップ選手に成長した。 「気づいたらプロへの意識が芽生えていた」。大学3年時には気持ちは固まっていた。帰省中の実家で家族に「自転車で生きていく」と告げた。佳寿浩さんは「お前が決断したことに文句は言わん。お前がやること全部サポートしてやる」と背中を押してくれた。 今春、大学を卒業し、5月に養成所に入所した。4人部屋で暮らし、所内で携帯電話は使用禁止。外出は2週間に1度だけ。一見厳しそうだが「プロになるために必要なこと」と競輪に集中できる環境を前向きに捉える。 12月に早期卒業となれば、2019年の制度創設以来5人目の快挙。大物ルーキーの「約束手形」ともされる肩書をひっさげてのデビューが控える。「父のように人間力があり、ファンに好かれる選手になりたい」。高い志を胸に競輪界を駆け上がる。
福井新聞社