ソーラーシェアリング経営8年の小田原かなごてファーム 安定のカギと「前例なき挑戦」
畑や田んぼで農作物を育てながら、同じ土地で発電もするソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)は、平地の少ない日本で再生可能エネルギーを拡大するための「突破口」の一つとして注目されています。2016年のソーラーシェアリング導入以来、設備の増設を続けてきた合同会社「小田原かなごてファーム」(神奈川県小田原市)の小山田大和社長(44)に、運営上のメリットや苦労、普及のための課題などを聞きました。(ライター・編集者/小泉耕平)
売電収入と農業収入で年商1000万円を突破
元々は地域の活性化を目指し、耕作放棄地を利用して地元・小田原の名産品であるミカンを栽培する活動に取り組んでいた小山田社長。全国的に再生可能エネルギー導入の機運が高まるなか、2016年に勤めていた郵便局を退職して小田原かなごてファームを設立。市内にある約100坪の耕作放棄地を利用して最初のソーラーシェアリング(1号機。設備容量15.12kW)を建設しました。 それから8年。小田原市内やその周辺市町村の耕作放棄地を利用して年々、建設を続けてきたソーラーシェアリングは今年2月に6号機(設備容量60.6kW)が発電を開始。設備容量の合計は約350kWにまで拡大しました。
現在も神奈川県開成町で、2025年1月の竣工(しゅんこう)を目指して7号機(121kW)の建設準備が進んでいます。小山田社長は現在の経営状況についてこう語ります。 「資本金40万円の小さな会社ですが、コロナ禍など逆風が続くなかでも再エネを広げていく心意気を見せてやろうと、ソーラーシェアリングの数を増やしてきました。その結果、定期的に入ってくる売電収入が年500万円超にまで増加。収穫したミカンを加工したジュースの売上など農作物からの収入約500万円と合わせると、年間1000万円以上になります。会社は私一人で運営しているので、融資の返済分を差し引いても家族で生活していくのに十分な収入は確保できています。小さくコツコツやってきたことが、今につながっています」