フードバンクへの食料寄付が減少 支援団体、配布中止も 背景に物価高や米不足 食品ロス対策進む
生活困窮者を支えようとフードバンク団体に寄せられる食品の量が減少傾向にある。物価高による消費者の買い控えや、原材料費の高騰を受けた製造業者の食品ロス対策が背景にあるとみられる。広島市の団体が食品の配布会を取りやめるなど、中国地方でも寄付減の影響が出ている。 米不足による寄付を呼びかけるなどしたフードバンクのチラシ 広島市安佐北区の社会福祉法人が運営する「あいあいねっと」は、月1回の食品配布会を10月限りで中止すると決めた。2021年に48トンあった食品の寄付が22、23年は40トンに。ことしは8月末までに15トンにとどまる。 同団体は08年から福祉施設やボランティア団体などへ食料を無償で届けてきた。その提供元は個人や食品業者、小売店だ。原田佳子代表(72)は「食品メーカーからの量が目に見えて減った。原材料高で厳しくなり、生産量を絞っているのではないか」とみる。 寄付金も減っており、4月からは食品の送料を利用者負担にした。原田代表は「支援を息長く続けるためとはいえ、コロナ禍からの立ち直りはこれからという時期に心苦しい」と話す。 島根県松江市のNPO法人「フードバンクしまね あったか元気便」は、22年度に28トンあった寄付が23年度は15・2トンに減った。大木理之(ただし)事務局長(67)は「個人からの寄付が大半なので、物価高による消費者の買い控えの影響が大きい」と受け止める。 今夏は米不足も追い打ちをかけた。市内の約550世帯へ食品を年4回届けるが、8月は米約600キロを購入して不足分を補った。18年に事業を始めて初の事態だ。 岡山県笠岡市の認定NPO法人「ハーモニーネット未来」も、「毎月のお米が足りません!」と書いたチラシを作り、交流サイト(SNS)などで拡散している。約660人に毎月1キロの米を届けているが、増岡衣里副理事長(56)は「9月末にはストックが底をつくかもしれない」と心配する。 全国66団体に7月にアンケートしたNPO法人「フードバンク仙台」(仙台市)によると、6割強の42団体が食品の寄付量が減ったと答え、うち34団体が「活動に支障がある」と訴えた。川久保尭弘(たかひろ)理事(37)は「物価高により、食料の支援がないと生活がままならない人は増えている。行政が十分にケアできていない分野を担う団体を物心両面で支えてほしい」と呼びかける。
中国新聞社