コロナ下の「新しい生活様式」と食品ロス 【井出留美の「食品ロスの処方箋」】
コロナショックと食
【筆者注】「コロナショック」とは、コロナ下の外出自粛などの行動制限により、外食や観光の需要が激減し、それが製造業にまで波及した不況のこと。 厚生労働省の「令和3年版厚生労働白書-新型コロナウイルス感染症と社会保障-」によると、2020年4月から6月までの実質国内総生産(GDP)の成長率は年率換算でマイナス28.6%とリーマン・ショックを超える落ち込みになった。 総務省統計局の「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果の要約」によると「2020年の完全失業者数は191万人と29万人増加(11年ぶりの増加)」した。 また日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客統計」(ビジット・ジャパン事業開始以降の訪日客数の推移〈2003年~2022年〉)によると、コロナ下の入国制限のため、2019年に3188万人だった訪日外国人数は、20年に412万人、21年には24.6万人と激減し、この期間のインバウンド需要はほぼ消滅した。 2020年の外食産業の売上高は、感染拡大防止のため「時短営業」「営業自粛」が求められた影響で、過去20年間で最大の減少率となった(図1)。
消費者の食料支出は、2020年3~4月の「巣ごもり需要」で食料品への支出が平年を大きく上まわる一方、外食支出は大きく下まわった。同年9~11月の「Go Toキャンペーン」で差は縮まるが、2021年1月の第2回緊急事態宣言により、再び差は開いていく(図2)。 そんな中、「デリバリー」や「テイクアウト」といった、感染動向に左右されにくいビジネスに活路を見いだした外食もある。
応援消費
料亭やホテルからの発注が止まり、高級食材は行き場を失った。さらに東京オリンピックが1年延期されると、需要を見込んで生産量を増やしていた生産者の計画は狂った。 農林水産省は、こうした生産者を支援するために「元気いただきますプロジェクト」をはじめた。ネット通販の送料を負担し、和牛、マグロ、タイなどの余剰食材を消費者に「食べて応援」してもらう取り組みだ。牛乳の需要が激減したため、乳製品をふだんより1個多く消費しようと呼びかける「プラスワンプロジェクト」も行われた。 コロナ禍で販路を失った農家や漁師のために「食べて応援プロジェクト」を立ち上げた食べチョク代表の秋元里奈さんは、「『生産者さんが食材の向こうにいる』という当たり前のことを、みなさんが実感できた」のではないかと語っている(BuzzFeed、2020/7/24)。