カナダのアニメファンが“1000キロ以上走って”作った「アート作品」が凄すぎる|知られざる「GPSアート」の世界
見た目以上に大変な「踊る棒人間」 わずか27秒の動画を制作するのに、会計士のダンカン・マッケイブ(32)は10ヵ月を要したうえ、1100キロ以上を走ることになった。 【動画】滑らかに踊る! GPSで作った「ダンシング・マン」アニメ 2024年1月、熱心なランナーでアニメファンでもあるマッケイブは、踊る棒人間のアニメーションを作りはじめた。そのために彼が使用したのは、ランナーやサイクリスト向けの、SNS機能とルート記録機能を兼ね備えた人気のGPSアプリ「Strava」だった。 マッケイブはStravaを使って日々のランニングルートを記録。その後、それらをつなぎ合わせ、「パープル・ハット」という曲に合わせてトロントの街を踊る帽子をかぶった棒人間のアニメーションを作り上げた。彼の動画はSNSで何千万回も再生され、Xだけでも2500万回以上再生されている。 簡単に思われるかもしれないが、そのプロセスは複雑で、肉体的にも大変なものだった。彼は約10キロのランニングを120回こなすことになった。 GPSアプリを使って地図上に絵を描く作品は「GPSアート」と呼ばれ、人気が高まっている。これまでも世界中の人々が、徒歩や自転車で自身が辿ったルートを用いて、ハイヒールやイチゴ、ロバ、火を吐くドラゴンなど、さまざまな絵を描いてきた。 今回マッケイブが作った作品の特徴は、それが動いていることだ。動くGPSアートを作るには、多くのランニングルートを編集しなければならず、事前に綿密な計画を立てる必要がある。「自分の知る限り、動くGPSアートを作ったのは私が初めてです。私はStravaアニメーションの先駆者なんです」とマッケイブは言う。 マッケイブはパワーポイントを用いてランニングルートを計画し、スライドをコマのように使ってアニメーションの動きを確認していった。1月1日、彼は最初のランニングをこなし、10月25日にすべてのルート画像が揃うまで、週に数回のランニングを続けた。 GPSアートは通常、GPSアプリを使用して作られるが、マッケイブは動画編集ソフトを使ってルート画像を編集する。 「走ったルートはStravaで記録しますが、記録が完了したら、すべての画像を個別に取り出してつなぎ合わせる必要があります」と彼は言う。「道路の位置をぴったり合わせて並べることで、背景が安定します」 描画する線の邪魔になる建物がある場合は、アプリを一時停止し、目的地に着いてから再開する。「一時停止を解除すると、Stravaが2つの地点をつないで直線を引いてくれます」 この方法で対角線を描くために、アプリを一時停止してから数キロ余計に走らなければならないことも多々あった。結果として、マッケイブは実際にアプリに記録されているよりも長い距離を走ることになった。 「客観的に見て、ひどいランニング体験でした」と彼は言う。「自分が馬鹿みたいに思えました」 それにもかかわらず、このプロジェクトは非常にやりがいがあったという。 「思いがけないところからクリエイティビティが湧いてくるんです。楽しいし、予想外のものができますよ」
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