コロナで日本社会はどう変化したのか…「オフィス問題」の深層
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】じつは知らない、「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃! 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
2020年8月、テレワークを実施した企業は8割
コロナ禍において街に起きていたことを取り上げたいと思う。ここにもまたコロナ禍が加速させつつある少子高齢化、人口減少社会の姿が見えてくる。 コロナ禍は、大都市におけるオフィスのだぶつきを鮮明にした。東京都心ではビルの3棟に1棟は空き室を抱えている。感染の収束を読み切れず、借り手たる各企業が様子見を決め込んだり、縮小マインドとなったりしているためだ。 賃貸オフィス仲介会社の三鬼商事の「オフィスマーケットデータ」によれば、2020年は国内主要7都市のビジネス地区(東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、横浜、福岡)のすべてで空室率が上昇に転じた。 とりわけ上昇幅が大きかったのは東京(都心5区:千代田、中央、港、新宿、渋谷)で、2020年12月は前年同月比2.94ポイント増の4.49%となった。平均募集賃料はマイナス0.9%となり、主要7都市のビジネス地区の中では唯一の下落となった。長らく続いてきた賃料上昇の流れが止まった形である。人口減少に伴い国内マーケットが縮小した後のビジネス街をイメージさせる。 今後の空室率は、どうなっていくのだろうか? オフィス街とは、繁華街と並ぶ大都市の「顔」の1つである。その動向は今後の都市計画や街並みにも大きな変化をもたらす。コロナ禍の影響を最も受けた東京を見ていこう。 コロナ不況の特徴は、業種によって業績に大きな差があることだ。小売業や飲食業、観光業、旅客業といった対面サービスを基本とする業種が大きな痛手を受けた一方で、むしろ業績を伸ばした業種も少なくない。このため、オフィスの解約や縮小は一時的現象であり、感染拡大が収まれば、再び都心オフィスへの出勤率は元に戻るという見方もある。 コロナ禍当初に見られた解約や縮小の動きが、IT系のベンチャー企業中心だったこともこうした見方を後押しした。IT系ベンチャー企業の場合には契約面積が小さく、影響は軽微だったからである。 だが、これらをもって「一時的な現象」と片づけるのは拙速に過ぎる。オフィスの解約は告知から半年や1年という時間を要するからだ。空室率の速報値は、半年以上前の動きを反映したものに過ぎない。 移転や縮小を正式に決めるのは、現在借りているオフィスの契約が満了を迎えるタイミングに合わせてである。見直しを決める企業があったとしても、その表明は今後数年にわたることとなる。 東京都内に本社を置く上場企業を対象としたアンケート調査(2020年8~9月、国土交通省)によれば、2020年8月時点でテレワークを実施している企業は8割にも及んでいる。縮小せず、拡大・維持する方針の企業は約7割で、今後も一定程度のテレワークの実施が想定される場合にオフィスを縮小することについて、14%の企業が「すでに検討している」と回答、「今後検討する可能性がある」の46%と合計すると6割に達する。 実際にオフィスの縮小に踏み切る会社がどれほど出てくるかは現時点では分からないが、すでに富士通が2022年度までにオフィスを半減させることを表明している。東芝も将来的に3割程度削減することを検討している。少なくとも総務や経理、人事といった間接部門は、賃料の高い都心部にオフィスを構える必要はない。また、直接部門でも、企画系などはサテライトオフィスなどと結んでテレワークすることが十分に可能だ。